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バイデン大統領の税制改革と、IRSの復活

アメリカ税制改革について、日本の一部新聞で報道しているが、私に言わせれば少しずれた観点である。このブログできちんと言っておきたい。バイデンの税制改革は富裕層に対する増税と言われ、まず最高所得税率を現在の37%から39.6%に引き上げる、そしPayroll Tax(日本でいう給料の源泉徴収)も引き上げる、相続税は2009年のレベルに戻し最高税率を45%とし、相続税基礎控除を現行の1170万ドル(12億円)から350万ドル(4億円)まで大幅に引き下げるという計画だ。しかし一番大きいインパクトはCapital Gain Tax(株式譲渡益課税)である。現行のCapital Gainの最高税率は長期保有(1年以上保有)で20%だが、これを39.6%まで引き上げるというもの。これは所得100万ドル(1億1000万円)以上の富裕層に適用されるが、最高税率は更に純投資所得税3.8%上乗せされ43.4%となる。ニューヨークではNY州税を含めると56.2%、カリフォルニア州では56.7%となり、これは大変な増税なる。
このバイデン大統領政府の財政を支えるのがIRSなわけだが、近年このIRSが疲弊しているとWall Street Journal は伝えている。IRSでは2010年から2020年のかけてその職員数が15%も純減しており、脱税犯罪調査件数も10年前に比べ半減していて、税務調査件数も過去40年で最低のレベルに達している。IRSコミッショナーは年間1兆ドル(110兆円)の回収漏れがあると指摘している。これはアメリカの1年間の防衛予算以上の金額で、甚大な損害となっている。
このような状況下で民主党主導の米国議会は今年度20億ドルの予算をIRSに与えており、バイデン大統領は来年は12億ドル、その後毎年4億1700万ドルの予算を与えると言っている。但し、IRSの問題はお金だけではない。日本の国税庁では考えられないが、IRSには税金回収会社、警察部隊、弁護士事務所、金融会社、コールセンター、セキュリティIT会社を一つにまとめた複雑な組織となっている上に、通常の私企業と違い政治的な縛りを受ける。
それでもIRSは今までCoca Cola やWhirlpoolとの大型裁判で勝利し、2017年の税制改革を乗り切り、パンデミックにより署員がテレワークを開始、財政出動による国民への支援金支払いを3回もスムーズに行っている。一方で電話をかけてもかからない、時間がかかる、ペーパーでの申告書が山積みになり処理されていない。税務署の間違いの通知を送り続ける等問題も発生している。年収100万ドル(1億1000万円)以上の納税者に対する税務調査は、2010年の13%弱をピークに直近では3%以下、全世帯主では1%強あったものが、0.5%以下にまで下がっている。特に最近の調査では年収160万ドル(1億8000万円)以上の納税者からの未回収残高が24億ドル(2600億円)あるとされ、富裕者層の脱税率が高いことがわかる。IRSは現金ビジネスのレストランや賃貸業は55%が正確な申告を行っていなく脱税率が高いと指摘してる。
最近の脱税は複雑なスキームを使い、大掛かりな脱税をしており、これを見破るには相応の経験とスキルのある税務職員が必要になる。また専門家も必要となる。脱税者は裁判になっても豊富な資金力を投じ、最後まで戦うケースが増え、件数も多くなり、裁判の長期化によりIRSも消耗してきている。初期のオバマ時代、共和党が議会の過半数を取るまで2008年から2011年には、IRSに対して毎年100億ドル以上の予算があった。現実として我がロサンジェルス事務所からIRSに電話をかけても殆ど繋がらない。復活には時間がかかりそうだが、まずは税務職員数を増加させることから始めなければ解決にはならない。その点日本の国税職員はいつも一定である。アメリカから見ればうらやましいと映るか、これほど赤字国債を乱発しても公務員数が減少しない不思議な国と考えるのか。

☆ 推薦図書。
奧村眞吾著 「こう変わる 令和3年度の税制改正」 実務出版 1818円+税
この本は先月発売されたものだが、自分の著を掲載するのを忘れていた。30年近く税制改正の本を書いていて、購入される方々もいつも通りに毎年参考にしていただいて、感謝、ただ感謝である。令和3年度の税制改正は、長い間続いた安倍内閣の後の管内閣最初の税制改正である。前の内閣と違ったカラーを出そうとした。カーボンニュートラル、デジタルトランスフォーメーション、など新しい税制を創設した。一方で新型コロナウイルス感染症関連の税制を多く出さざる負えなくなった。世界の潮流からM&A税制、金融税制も改正しなければならなくなったほか、税収確保から資産税などの増税措置も講じられたのである。この本では改正税制を深く理解するため図解や事例を多用して、理解しやすく構成されているナンバーワンの税制改正本だと、自画自賛している

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