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富裕層に優しい、アメリカ税制

先日アメリカの超富裕層の税率が異常に低いとニュースが流れ、このブログでも大きく取り上げた、そして、このほど、New York Timesが4.5兆ドル(470兆円)の産業を誇るPrivate Equity業界は別世界の税制優遇が行われていると報道した。多くのPrivate Equityはパートナーシップを作り、企業の買収投資を行うが、それはもう複雑な仕組みで、IRSもお手上げであるとも書いている。又、IRSは多国籍企業には厳しい税務調査を行うが、このようなパートナーシップへの税務調査は全く行われず、不平等に取り扱われているとしている。日本では知られていないがPrivate Equityの収益構造はマネジメントフィー(資産の2%)及び将来の利益に対し20%の成功報酬からなっている。英和辞典には載ってないが、この成功報酬のことを、英語でCarried interest呼び、正確には出資額に対する利益配分を指す。アメリカの最高所得税率は37%だが、このCarried Interest の税制は長期キャピタルゲインの優遇税率20%が適用され、これは不平等でおかしいと、一部報道機関で指摘されている。
過去に、このLoopholeを埋める試みが行われたが、Private Equity業界には200人ものロビイストがおり、過去10年間で6億ドル(630億円)を使い課税強化を阻止してきているのが実態だ。そのため、この10年で1300億ドル(14兆円)の税金の取り漏れがあったと推測されている。一方でPrivate Equity業界は更なる税制優遇の手段を考え、2011年にはマネジメントフィー2%の一部を免除し、Carried Interestの割合を大きくすることで更に税金の減免を図ろうとした。このテクニックをFee Waiverと呼ぶが、この業界の大手のKKR, Appolo Global Management, TPG Capitalはこの手法を使うようになった。
この手法が横行する中、内部告発者が出てきて、オバマ政権も税制改革に取り掛かろうとしたが、ロビイストの強い反対で、弱腰になり2015年に特定の無理なFee Waiverのみ違法として規制する一方で、それ以外は、このFee Waiverを合法とすることになった。IRSの税務職員が2008年から2018年にかけて1/3削減されており、そのためIRSは資金力、政治力に勝り、複雑なストラクチャーのPrivate Equityに太刀打ち出来ず、内部告発者が指摘した32社の殆どに対し税務調査を行っていなかった。
トランプ政権も当初は税制改革に乗り気で、通常1年の長期キャピタルゲイン優遇税率をCarried Interest収入及び売却には3年の保有期間が必要とし、IRSはPrivate Equity及びパートナーシップ間の内部取引を厳しく監査出来る税務調査権を強化出来るとしたが、共和党の反対にあい、当時財務省長官のMnuchin氏は、このIRSによる税務調査権を制限した。これにより実際3年保有しなくても優遇税率を受けられる手法が横行するようになり、Carry Waiverという所有期間3年未満でも優遇税率で取引ができるようになり、つまり、やりたい放題となったのである。
これらのPrivate Equity会社はコロナのパンデミックでも大きな利益を上げ、エギゼキュティブの報酬も83億ドル(8500億円)に上った。昨年の報酬はBlackstoneのSchwarzman氏は 6億1000万ドル(630億円)、KKRの共同創始者はそれぞれ9000万ドル(92億円)、Appoloの Leon Black 氏は2億1100万ドル(230億円)となっている。バイデン大統領が掲げているIRS強化計画だが、何もしなければ、今後10年で1300億ドル(15兆円)の税金を取り逃がしてしまうことなると言われ、やはりLoopholeを埋めることとIRSの強化をしないことには益々格差社会の歪が大きくなり、ずる賢いビリオネアが横行することになる。心配なのは日本人でも、アメリカに資金を送り、投資することで、この訳の分からないスキームを利用した脱税を計る不埒者が出てくることである。

☆ 推薦図書。
相原孝夫著 「職場の感情論」 日経BP 1600円+税
新型コロナウイルス感染症の蔓延による外出自粛要請で、在宅勤務つまりリモートワークが進んだ。リモートワークにはメリット、デメリットがある。リモートワーク開始から数か月は、通勤地獄から解放されたとか、周囲に邪魔されず仕事に集中できるなどメリット面が強調されたが、大きな問題点が最近出てきた。「感情」である。「意思伝達がむつかしい」「上司とのやり取りが減った」など。しかし、もっと深刻な問題は、リモートワーカーの離職率が高いのである。原因を調査すると、在宅勤務を行う人は孤立感が顕著、そしてリモートワーカーに慣れてきている者の3分の2は仕事に意欲を持っていないことである。リモートワークは、もともとあった職場の問題を顕在化させたのである。何でも言い合える人との「信頼関係の欠如」である。職場では、自らの感情の制御や、他者への感情の配慮など「感情」のマネジメントが不可欠である。例えばメールの返信が遅れた、ランチに誘わなかった、声掛けが無かった、等が職場環境を左右している。
一方で、噂や陰口、恨みなど、いわゆる社会的陰謀も少なくなるが、同僚との関係性は失われて行き、ポジティブな環境ではなくなる、としている。
職場でも、プライベートでも、コンタクトが重要だという事であろう。

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