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何と22年ぶり、ワイナリーがNY株式上場」

Wall Street Journalに、キャリフォルニア州のワイナリー2社が上場するとのニュースが流れた。思えば、最後にワイナリーが上場したのは1999年なので、22年ぶりの上場となる。今回上場するのはVintage Wine Estateと Duckhorn Wineryの2社だが(Duckhorn は先月末NAPAでNY市場に上場済み。)、そもそもどうしてワイナリーの上場に20年以上の空白があるのかだ。
Vintage Wine Estateはナパ、ソノマ、中央カリフォルニア沿岸部に12のワイナリーを所有し、50ほどのブランドを持ち$10 – $150の価格でワインを販売している。但し、価格の中心帯は$10 – $20とリーズナブルな価格帯である。消費者への直接販売、Business to Business販売, Kroger, Albertson, Target, Costco等へのWholesale販売が1/3づつと売上リスクを分散させている。一方、Duckhorn Wineryはナパにあるワイナリーで12のブランドを持ち、価格帯は$20 – $200となっている。どちらかというと高級ワインのイメージがあるが、普通のスーパーでも販売している。
そもそもワイナリーIPOの先駆者と言えば、1993年に上場を 果たしたキャリフォルニア州ナパのThe Robert Mondaviが有名だ。彼らは、もともとはイタリアの移民として、家族ぐるみでナパでワイナリーを営んでいたが、気性の激しいRobert は弟と喧嘩し、母親に追い出され、自分でワイナリーを始めた。自分の息子二人でワイナリーを大きくさせたのが、The Robert Mondaviである。ところが上場後Robertと二人の息子Michael とTimothy とで争いが始まり、経営がうまく行かず株価が大きく下落し、2004年にワイン大手のConstellation Brandsに10.3億ドル(1000億円)で売却を行い、The Robert Mondaviの名前は残ってはいるが、現在はMondavi家の誰も所有していないという有様。また、Ravenwood Wineryは1999年に上場を成功させたが、これもまた、経営がうまく行かず2001年にやはりConstellation社に売却を余儀なくされた。この元所有者曰く、ワインビジネスは農業であり、天候に左右される、ワイナリーやぶどう園の維持費は高く、その品質の維持とWall Streetが期待する成長力の期待に応えるのは難しいと述べている。
全米には1万1053ものワイナリーがあり、その46.5%が正当な評価が行われれば売却してもよいと回答している。これはコロナ禍、パンデミックで中小のワイナリー経営が難しくなっていることを反映しており、資金力のあるワイナリーにとっては買収のチャンスが広がっていることを示している(日本人でナパにワイナリーを持ちたい人にとって今がチャンスである)、今回Vintage Wine EstateはSpecial Purpose Acquisition Company (SPAC)を利用した上場で豊富な資金を利用してワイナリーの買収を積極的にしていくとも述べている。
今後ワイン消費はパンデミック後、更に増加すると見込まれているが、Wall Streetのアナリストはワイナリーの評価は難しいとしている。多くのワイナリービジネスは農業であり葡萄を育て収穫し、販売するというサイクルで、ほとんどの収入は第4四半期に計上され、天候に大きく左右される。これは四半期毎に数字を出さなくてはならないWall Streetに対し厳しいビジネスであり、このような会社にどう株価を反映させるのかは難しいことになるというのである。今後この2社が上場会社として成功し、過去の上場会社の失敗を繰り返さないことを祈るばかりであるが、日本の甲州ワインなどもIPOを目指す会社が1,2社あってもよいのではないかと

☆ 推薦図書。
伊丹敬之著 「日本企業の復活力」 文藝春秋 950円+税
緊急非常事態が続く日本。このコロナショックはバブル崩壊に次ぐ戦後2番目の危機である。戦後の危機を大きさから①バブル崩壊②コロナショック➂オイルショック④リーマンショック、となる。コロナショックは他のショックと異なる点は①コロナ禍の経済的被害が国によって異なるため、世界経済の勢力地図に変化が起こる②人々の動きを国の内外で止めてしまったので、急速に進んで来たグローバリゼーションにブレーキがかかった➂人々の接触ができなくなった分、デジタル化が加速した。コロナ禍で大きくクローズアップしたのが「テレワーク」。この「テレワーク」は「働かないおじさんのあぶり出し」「管理職の良し悪しのあぶり出し」などで、企業として、「きちんとした管理職を育てて来なかったことの反省。社員を過剰に拘束するような非合理な雇用慣行への反省」などがある。役所や電鉄電力ガス会社は例外として、いかに世界が経済発展に努力している中。未だバブルの影を踏んでいた日本は、GDPが毎年毎年落ちていったかが、この機会に浮き彫りになった。コロナショックは日本の企業の背中を押している。それを奇貨として、立ち直りのチャンスに生かさない手はないとしている。私としては自分で言うのもなんだが、日本の国家資格取得者、医師、会計士、弁護士・・・などは、今もって既得権益の上に胡坐を組んでいる者が多すぎる。今や世界のどこからも、日本の士業に学ぼうとする国はない。コロナを機に、日本は変わらなければ、ますます世界から置いてきぼりになる。

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