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アメリカ居住者を装った脱税事件

この事件は、なかなかの国際税務に精通した男の犯罪である。まず住民税、住民税は12月31日に住所を有していた者に、市区町村が翌年課税するという仕組みだ。従って12月31日に住所がない、つまり日本のどこにもその者の住民票が無ければ住民税の掛けようもない。よく犯罪者で「住所不定」とあるが。その者は市役所から住民票を抜いたままで、実際に住んでいる市区町村役場に転入届を出していない者を言う。住民税も払わない、その代わり国民健康保険に入れないので病院にも行けないことになる。
この男は、毎年、年末近くになると市役所から住民票を抜く際「住所不定」とならないように、転出先にアメリカ移住と届け出ていた。つまり住民登録のアメリカへの転出入を繰り返すことで、あたかもアメリカ居住者のように装った。多分年間1,2度渡米していたのであろう。日本で住民票を抜いてアメリカに住民票を移したと思うのはアメリカを知らない人が言うことで、アメリカには住民票も戸籍もない。そうであるから、日本にいながら住民票を抜いたり入れたりしていたが、信じられないことに、この男は立派な著作権を持っていて(何かは伏せるが)、この著作権使用料を使用会社から、アメリカ合衆国の本人名義の銀行口座に送金させていた。普通、個人に著作権料を払う場合は源泉徴収する。外国人に払う場合も源泉徴収するので本当は受け取る方は脱税のしようがない。しかし、この男は日米租税条約を熟知していたのである。
ARTICLE 12にはRoyalties arising in a Contracting State and beneficially owned by a resident of the other Contracting State may be taxed only in that other Contracting State
(つまり日本で生じ、アメリカの居住者が受益者である使用料はアメリカにおいてのみ課税できる) これを活用すれば、アメリカ居住者に日本の会社が使用料を払う場合は源泉徴収はいらない。この男は、アメリカ居住者ではないのでアメリカで税金を払うこともなく、また日本ではアメリカ人に払ったことになっているので、この種の源泉徴収票は存在しない。
この詐欺にも似た行為を長年行ってきて、ついに御用となったのだが、日本の国税庁も甘い。アメリカ居住者になるためには半年以上アメリカに住んでいなければならない。
アメリカで3か月以上住むためにはビザが必要だ。簡単に取得できるものではない、外務省に問い合わせれば簡単に偽アメリカ居住者とわかるはずだ。私も長年日米税務に携わっているが、この新手の脱税は初めてで日米租税条約を改めて読む気になった次第である。

☆ 推薦図書 ☆
青木仁志著 「志経営」  アチーブメント出版  1600円+税
著者は人材教育に関しては右に出るものはいないと言われている。氏が経営しているアチーブメントグループは「働きがいのある会社ランキング」5年連続ベストカンパニーに選ばれている。どうしてそうなるのか、それは「志経営」である。理念経営を大前提としつつ、もう一段発展した経営のOSといえるものが「志経営」である企業・社員・顧客の志が一体化することで、企業は善循環が加速し「縁ある人の幸せ」は限りなく増大していく。経営において利益は重要である。二宮尊徳は「経済無き道徳は戯言である。道徳なき経済は犯罪である」と言っている。理念だけでも利益だけでもない、理念経営つまり「理と利の統合」つまり、わかりやすく言えば、縁ある人を幸せにした結果、得られる果実が利益あると。この本は社員の働きがいが生きがいに変わる「中小企業の繁栄を創る普遍の原則を解説している、中小業者のバイブルである。

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