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合法化されたマリファナビジネスと税金、アメリカ

Forbesによると、2018年現在、大麻が合法化された州は全米で28州及びワシントンDCとなっており、税法上は合法であろうがなかろうが事業主は税金を納める義務がある。これはアル・カポネがその昔、密造酒の脱税で逮捕されたのと同じ発想だが、アメリカではレーガン大統領時代にファーストレーディのナンシー・レーガンが、“Just Say No”というキャンペーンに力を入れていた1982年にSection Code 280Eなる税法が成立した。これによれば、麻薬の密売人の税務申告は売上に対する課税ではなく、仕入にかかった費用は、Ordinary and Necessary Business Expenseとして損金計上後の利益に対し課税するというものである。それでは、麻薬の輸送費、警察への賄賂、拳銃や弾丸、倉庫代が損金計上出来るのかということになる。

 

つい最近、コロラド州の合法の大麻販売会社Alpenglow Botanicals社の脱税訴訟が行われたが、控訴裁判で敗れた。ここでは大麻ビジネスに関連した様々な設備施設に関わる費用に、Ordinary and Necessary Business Expenseが全て認められなかった。麻薬ビジネスを専門とする会計事務所は、S Corp(これはアメリカ独特の法律、説明はいつかする)もIRSの調査対象となりやすいとも言っている。

 

大麻ビジネスはカリフォルニア州でも今年から合法化され、21歳以上であれば個人の楽しみとしての利用であれば大麻を吸うことが出来るようになった。ただ、相変わらず非合法なビジネスが横行しているため、カリフォルニア州は非合法と見做される1000ものビジネスに対し Cease-Desist Letter を送り、ビジネスの廃業命令を出している。この1000あるビジネスの64%がロサンゼルス市にあるとして取締りが強化されているが、捕まえても軽犯罪に当たるため、現金や大麻は押収されるものの、従業員やオーナーは殆ど刑務所に行くこともない。そのため、直ぐにまたこの商売始めるという有様だ。

 

では、大麻ビジネスが合法化されたにも拘わらず、どうしてこれほど非合法な大麻ビジネスが流行るのか。これは、一つは、合法化されると販売業者の場合Excise Tax(売上税)15%を顧客にチャージしなくてはならないこと、また、大麻を製造している製造業者はオンスあたり1.29-9.25ドルの税金を払う義務が出て来ることから、末端価格がどうしても高くなることになる。これでは合法ビジネスの価格競争力は弱体化することになる。

 

また、合法の大麻業者にとって更に大きな問題は、大麻ビジネスは州レベルでは合法であるが、連邦法上はSchedule 1 drugということで非合法な扱いとなっている。連邦法の規制を受けている銀行としては、反社である彼らのビジネスの口座を開設することは出来ない。開設するとマネーロンダリングの罪に問われることになるのである。従って、これらの大麻ビジネスは全て現金取引となる。税金の支払いに銀行振り込みが出来ないので、大麻事業者は売上税納税のために税務当局まで毎週現金輸送となる。これは業者にとっては輸送コストもかさみ、安全でもない。また、従業員の給与支払いも現金になるので会計担当者の人数を多く抱えることにもなる。

 

大麻事業者にとってはビッドコインが発達すればビッドコインで納税も出来るのではないかと考えているようだが、価格変動も激しく、税務当局もそこまでのテクノロジーはまだのようだ。ただ警察にとっては、この現金ビジネスは盗難や窃盗の恰好のターゲットになりやすいため頭痛の種かというと、そうでもなさそうである。なぜならば、法律で警察が押収した現金はそれが犯罪に関連した現金かどうかを証明する必要がなく、アメリカでは全て警察署のものになるということで恰好の収入源となっているのが現状である。デトロイト警察はそのような大麻ビジネスから押収した現金がかなりの金額になり、2年前に500あった大麻販売店が今では200まで減少したということである。日本も押収したものが全て警察の収入になるのなら、警察官の意気込みも違うのではなかろうか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
ビートたけし著 『日本人改造論』 角川新書 800円+税
笑うより笑われるほうが楽なんだ。政治家って芸人に似ている。人に笑われたくないと思って生きるより、どうせオレはくだらない、どうぞ笑って笑って。オレはくだらないんだよって言ったらね、変わるよ。という書き方である。この本には驚くべきことに税金の話がでてくる。ビートたけしなんか毎年億単位の税金を支払っていると思うが、「国の予算が税金で成り立っている。そりゃ腹立つね。何だか過疎みたいなところへ金持ってって、道路なんかつくりやがってと思うけど、オレの金だ、オレの、このヤローって。この道路は2メーターくらいオレの金だぞって言ってるもん。なんだか30人くらいしか住んでないようなところに、いい道路があるんだけど、それもオレの金だ」と。日本の税率の高さを身をもって、たけしは実感しているのだろう。「金を稼いでいるが、寝ないで働いてんだよ。あんたもお金欲しければ働きなさいって。働けって。みんなと同じことやってお金稼ごうってのは間違いで、一人で10人分を働けるから10倍もらえるんだから、みんなと同じことやってて、同じような努力しかしてなくて、それは図々しい。150キロのタマを投げるピッチャーと同じ給料をよこせと言うんなら、自分も150キロのタマを投げなっていうの。プロボクシングの世界チャンピオンがあれだけの金取るのはおかしいじゃないかと文句を言うんなら、チャンピオンを殴り倒してみろっていうの」。さすが、たけしである。収入の高さは社会的に必要とされるからの収入の高さであると言っている。改めてたけしの識見の高さを再認識した著である。

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