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日本も信託(家族信託)が急増か?

日本ではボケ老人対策に成年後見制度を利用せずに、信託を利用するケースが増えている。厚労省が公表している日本の認知症患者は462万人、認知症予備軍は400万人強としている。これに対して後見制度利用はたったの18万人。つまり、弁護士や司法書士などの後見人を信用していないのだ。確かに後見人の使い込み事件は後を絶たない。しかし、後見人を活用しない理由はそれだけではない。2015年から始まった相続税大増税に対しての対策ができないのだ。後見人はただただ無駄な費用を抑えたり、他人に騙されないように防御するのが役目なので、借入金をしてまでも積極的な相続税対策などは全くできないからだ。

 

とはいえ、相続税の基礎控除は4,800万円に下がり、最高税率は55%に上昇した今、年老いた祖父母や親の税対策をしなければ、死後、大変な事態になる。そこで登場したのが「信託」である。信託は「委託者」「受託者」「受益者」の三部構成になっていて、受託者が委託者や受益者になりかわって対策の全てを行う。つまり意思判断能力の劣った親に代わって、息子や娘、さらに孫などが受託者となって全ての財産管理、運用、処分を取り仕切るというものである。

 

アメリカで信託は日常、普通に使われている。だいたい40歳を過ぎた頃から信託会社や弁護士を受託者として財産を信託する(Living Trust)。相続が発生すれば、たちどころに被相続人の生前の意思どおりに相続財産が行き渡る。もともとアメリカは、戸籍謄本はもとより住民票もない国である。そのため人が死んでも、その人の法定相続人が誰かということも、また、確定することも数年を要するのが珍しくない。遺言を残していたとしても、その遺言が法的に正しいかは、裁判所が介在して、公表されるので、一般的ではない。したがって、アメリカでは財産を信託していると承継に非常に便利である。不動産や預貯金、証券はたまた自動車まで信託しているのもいる。私のロサンゼルスの事務所では、それでてんやわんやのこともある。

 

日本もそれを真似て、相続争いなどの回避から、生前に財産を信託する。それも信託会社に信託(商事信託)すると毎年の信託報酬がかかるので、家族の一人を受託者として信託させ、その者に税対策の責任を持たせてやろうという家族信託が今、日本ではブーム化している。しかし信託契約から始まって「信託法」という法律に全て縛られる。家族全体で信託するのもいいが、信託法を理解していないと大変なことになる恐れがある。

 

どこまで信託法を理解して推奨しているか知らないが、アメリカでは全て弁護士が介在している。日本でよく、アメリカで信託をしたいので弁護士を紹介してくれという依頼があるが、私は必ず「信託専門の弁護士を何人か知っているが、誰も日本語を話さない」と答えている。アメリカでも、交通事故、離婚、移民などの専門弁護士で日本語を話せる人はいっぱいいるが、信託は難しいので、アメリカでも専門弁護士はそういるものではない。日本のこのブームで簡単に「家族信託」で相続税対策OKと言えるのかどうか?

 

 

☆ 推薦図書 ☆
村田沙耶香著 『コンビニ人間』 文藝春秋 1,300円+税
主人公は36歳、未婚女性。大学在学中からコンビニでアルバイトをし、大学卒業後も就職せず、そのままコンビニでアルバイトを18年も続けて、付き合った彼氏はゼロ。毎日毎日食べるのはコンビニ食、夢の中でまでコンビニのレジを打ち、働いているコンビニのいつもながらの「いらっしゃいませ!」の掛け声が毎日の安らかな眠りと精神的安定をもたらしてくれる。
ある時、男性から、そんなコンビニ的生き方は恥ずかしいと言われるが、コンビニこそが、自分を世界の正常な部品にしてくれると信じ人生を歩み続ける。現代社会を問う作であるが、この本は第155回芥川賞の受賞作であるので購入し、確かにコンビニの裏にあるものや、勤務形態、客への対応のしかたのマニュアルは大変参考になった。私はこの本はビジネス本であると定義づけている。著者の文章能力や表現能力を考えると、芥川賞の価値も随分落ちたものだと思うのは私一人ではあるまい。

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