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特区の法人税ゼロ、外資誘致に政府本腰

☆ 今週の推薦図書 ☆
池上彰著 『池上彰の宗教がわかれば世界が見える』 文春新書 840円
仏教、キリスト教、イスラム教の3大宗教から神道、ユダヤ教までを解説している。
そして、人々はなぜ宗教を求めるのか、それは「心の安寧を求めている」からであると。
日本人は無宗教なのか、日本人は生まれたら神社にお宮参り、正月も神社や寺に初詣、しかし結婚式はキリスト教の教会で、死ねばお寺で、ということが当たり前に行われている。日本人は神社や寺、教会でしばらく座っていると、敬虔な心が洗われるような気持ちになるという、独特の宗教感覚がある。
この本ではその他、対談形式で8人と対談しているが、政治がいかに宗教と密接であるかということを教えている。

 

先週はアメリカにいてブログをさぼったが、帰国してみると、産業競争力会議(議長:安倍首相)の提案内容がこのほど決まったと報道があった。それによると、外国企業の誘致に向け、1、特区の法人税をゼロにし、2、高い能力を持つ外国人の受け入れ基準を大幅に緩和するという。

隣国の韓国や中国、ヴェトナム、マレーシアなど軒並み法人税の実効税率が25%以下、欧米諸国も20%台というのに日本は復興税を入れると38%にもなる。これではさすがに、日本に投資を行い日本法人を設立しようとする外国企業はない。それどころか、日本から海外へ拠点を移そうとする日本企業も多くなる。したがって、少子高齢化に伴う産業の空洞化を防止する意味からも、海外企業の日本誘致は重要なこととなってきた。

韓国やシンガポールでは外資企業には法人税率はゼロの特別サービスがあり、イギリスも極端な優遇措置を施行していることもあって、日本は東京都内に受け入れ特区を作り、そこでは法人税はゼロの他、高い能力を持つ外国人の受け入れ基準を緩和し、外国人技術者の新規入国者数を約4200人から10000人以上に増やすことを目指すという。その背景には政府は海外からの投資が国際的にみて低く、減少していることの危機感があるからである

政府は法人税をゼロにすれば海外の企業が日本に投資する額が増加し、高い能力を持つ外国人が日本に移住するとしているが、はたしてそうであろうか。外国人も日本に1年以上滞在すれば、税法では日本の居住者である。そうなれば日本の所得税・住民税の対象者となる。欧米などでの高い能力を持つ人たちの年収は、ケタ外れである。最低でも数千万円、億以上はザラである。平成25年度税制改正では、所得税等の最高税率は55%となる。しかも欧米のような所得控除が少なく、節税策は給与でもらう限りほとんどない。

日本のプロ野球でアメリカから助っ人できた選手などは、いかに日本の居住者とならずに済むかで必死である。日本での最終戦が終わった次の日に帰国する。そして開幕ぎりぎりまでアメリカにいる。これは1日でも多くアメリカでの滞在日数を稼ぐためである。欧米では常識である、日本の所得税が高いから、彼らはいかに日本居住者にならないで済むかが大問題である

そして平成25年4月1日からは、世界で画期的な税法の改正があった。日本の居住者であれば、その人の持つ全世界財産に、死ねば日本の相続税がかかるのである。日本の居住者に該当するアメリカ人が日本で死ねば、その人がアメリカに預けた預金、アメリカの不動産、投資信託など全財産に対して、アメリカにいるアメリカ人家族に日本の相続税がかかるのである。しかも日本の相続税・贈与税の最高税率は55%となる。さらにはカナダ、オーストラリア、ニュージーランドでは相続税はない。このような国から、日本の税法を聞かされて日本に移住するという「高い能力を持つ外国人」がどれほどいるだろう。
特区での法人税ゼロより、そこで働く「高い能力を持つ外国人」は何年日本にいても日本では非居住者扱いします、としなければ、仏作って魂入れずの諺通り、特区での外国企業誘致構想は絵に描いた餅に終わるのではないだろうか。

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