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アメリカの裁判所と中国の偽物作り、グッチをめぐって(その2)

今、デルタ航空で日本に向かっている。思ったより、いいワインが置いてあった。
さて、先週の続きである。グッチの偽物作りをしている中国組織の銀行口座(Bank of China)の開示問題で、アメリカ裁判所の命令にもかかわらず、その中国Bank of Chinaは命令に従わない。

 

考えてみれば、偽造商品をめぐっての事件は今回が初めてではない。過去には宝石装飾のティファニーが中国の銀行に対し金銭的な損害賠償を要求したにもかかわらず、逆に偽造組織を中国側が守って問題になったことがあった。アメリカの立法府が法律上の問題を提議しても中国側の非協力的な態度は何度か続いていて、アメリカ議会でも中国ビジネスマンは国際上のルールを守らず、中国政府はアメリカの司法権から偽造組織を保護していると批判されている。

 

そもそも今回の問題は2010年から始まったもので、アメリカで偽グッチのバッグを販売する組織を訴訟するところか始まり、その違法売上金をBank of Chinaへ送金していることを突き止め、Bank of Chinaに偽造集団がどれだけの金額を送金しているのかを明らかにするよう口座開示を求めたものだ。Bank of Chinaは、この判決は中国国内法に違反となると開示しなかったため、アメリカの裁判所は法廷侮辱罪として罰金を科したが、その後、また争った結果、アメリカの裁判所は新たな裁判所命令を出した。この裁判所は、今回の訴訟の裁判権はアメリカにあることを明言し、Bank of Chinaに対し口座情報及び必要な資料を提出するよう強く求めた。裁判所は中国がBank Secrecy Lawを厳しく運用している証拠はなく、中国の内情よりもアメリカでの知的財産権を守る権利の方が明らかに重要だとした。

 

先月、裁判では、グッチ側は裁判所に対して少なくとも1200万ドル(15億円)の損害を受けたとして、Bank of Chinaに同額を現金で支払うように求めたが、Bank of Chinaは「何の根拠もない」として拒否している。この裁判は、ある意味、世界中が注目している(何故か日本ではあまり報じられていないが)。今後アメリカがどう出るのか、UBSの問題でスイスの銀行をかつて徹底的にやり込めたが、オバマ政権の今後の動向を見守りたい。
しかし世界中に対し、中国が言論弾圧などの人権問題の他にも、このような側面があることを明らかにしたのである。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
マーティン・フォード著 『ロボットの脅威』 日本経済新聞出版社 2,400円+税
20世紀のアメリカでは農業の機械化が大々的に行われ、何百万人もの職を奪い、失業した農業従事者が工場での職を求め都市へ流入した。本来なら機械化は生産性を上げるための道具だったが、今や機械は労働者そのものになってきている。アマゾンが買収したキヴァのロボットは倉庫内を動き回って物を運ぶようになり、ウォルマートでは買い物客が携帯電話でバーコードを読み取り、計算を済ませて支払いまで行う企画をしている。これらのテクノロジーはホワイトカラーの仕事まで奪いつつある。
ある大リーグの試合でスポーツライターはこう記事を書いた。「2点リードされて9回を迎えたとき、エンゼルスは敗色濃厚だった。だがロサンゼルスはブラディミール・ゲレーロの貴重なシングルで逆転し勝利した。ゲレーロは今シーズンを通じて活躍し、特にデーゲームに強さを発揮した」実はこの記事はコンピューターが書いたのである。今やコンピューターは創造性まで持ち作曲はもちろん、3Dプリンティングと自動運転車は今後、労働市場だけでなく経済全般にも大きな変化をもたらす。仕事が自動化されると、やがて多くの人が職を失い所得がなくなるとしている。考えさせられる1冊である。

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