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相続税の歴史、日本とアメリカ~その1~

日本の相続税は明治38年(1905年)、日露戦争の戦費を補う税として登場した。今や日本の相続税は先進国のなかでは群を抜いて税負担が重くなっている。「三代たったら財産がなくなる」から「次の代で財産がなくなる」までになった。相続税率も最高55%となり遺族が相続する財産よりも国が持って行く財産のほうが多くなった。

 

相続税の歴史は古く、古代ローマ帝国やエジプトでも既に存在していて、イギリスでは1694年、フランスでは1703年に相続税法が成立したが、相続税の立法主旨が今とは異なり、君主が人民の相続財産に対して、その一部を相続する権利を持っていたことや、財産を相続するにあたって人民は君主に承継料を納めなければならなかったことに起因する。したがって、不動産など相続財産の名義を書き換えるときに、登記所がその書き換えに対して手数料を取るようになる。その手数料が税に発展した。

 

日本もかつては、不動産の相続に対しては相続税が非課税であった。なぜなら、所有権移転の際の登録免許税が多額に課せられていたからである。当時、7万円超の相続財産には最高税率は5.5%(家督として相続)、それ以外は6.5%であった。それが昭和の時代、相続税の最高税率が75%まで上昇し、平成元年の相続税額納付の最高は松下幸之助氏である。相続財産が2,449億円に対し、相続税額は、なんと1,444億円であった。6割が国、4割が遺族という配分である。誰がための資産蓄積であったのだろうか。既に所得税など課税済みの財産に対して、また相続税が課せられる。二重、三重課税であるために、今や相続税制が残っている国は50か国に満たない。中国やロシアなど共産主義国はもとより、カナダ、イタリア、オーストラリア、ニュージーランドなどにも相続税はない。

 

筆者は今回のブログで、なぜ相続税を取り上げたかというと、1916年にアメリカで相続税(遺産税)が誕生して今年100周年だということである。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、当時ヨーロッパで第一次世界大戦が吹き荒れるなか、アメリカ議会は万が一、アメリカも参戦するようなことがあれば歳入を増やさないとならないため、亡くなった人の財産に課税するという相続税を立法化させた。しかしその結果、1917年の発表では、相続税がかかった人は、亡くなった人の1%にすぎず、しかも相続税収は連邦の歳入の1%に及ばなかった。当時のウォール・ストリート・ジャーナルやニューヨークタイムズは、相続税というのは「率直に言ってクラス差別」だと書いてある。1916年のアメリカ相続税法では最高税率が10%、基礎控除は5万ドル(今の100万ドル=1億円)としている。当時、相続税の成立に賛成した議員たちは、この税は道理にかなっていると言う一方で、このような富裕層だけに課税する法律は国で作るべきではなく、むしろ作りたければ州に任せるべきであるとした議員は多かった。

 

アメリカの相続税は今や最高税率は39.96%(日本は55%)、基礎控除は545万ドル(約6億円、日本は4,800万円)。100年経った今もアメリカでは、相続税法を維持すべきかどうか議論が続いている。大統領選でも民主党は態度を明らかにしていないが、共和党は、はっきりと、相続税は廃止すべきだと言っている。それでは、アメリカにおける相続税についての存廃の議論はどうなっているかは、次のブログに譲りたい。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
学研教育出版編 『もう一度読みたい 教科書の泣ける名作』 学研教育出版 800円+税
子供のとき、我々はたくさんの物語を教科書で読んだ。「ごん狐」「注文の多い料理店」「大造じいさんとガン」など。しかし、「かわいそうなぞう」はある意味、戦争の悲惨さを語っている。オバマの広島訪問とだぶったので、読んでいない方々のためにサマリーを紹介しよう。
第二次世界大戦も末期、東京空襲も盛んな時に、動物園に爆弾が落とされ猛獣たちが逃げ出すと大変だからと、動物に毒注射を打って殺していたが、象は体が大きくて効果が出ない。それで、食事を与えずに殺そうとしたのである。上野動物園では餌を与えない日が続いた。そのうち、げっそりと痩せた顔に、あの小さな目がゴムまりのようにぐっと飛び出してきた。耳ばかりが大きく見える、悲しい姿に変わった。ある日、2匹の象がひょろひょろと体を起こして、お互いにぐったりとした体を背中でもたれ合って、芸当を始めたのだ。体中の力を振り絞って、よろけながら一生懸命だ。芸当をすれば、元のように餌をもらえると思ったのだろう。象係の人は、泣きながら、もう我慢ができない。餌をやり、水を運んだ。「さあ、食べろ、飲んでくれ」と象の足に抱きすがった。他の人は皆だまって見ないふりをした。餌や水をやってはいけないのだ。こうして一日でも長く生かせておけば、戦争も終わって助かるのではないか。しかし2匹の象は手遅れで死んだ。どの人も象に抱きつき、心の中で「戦争をやめろ、戦争をやめてくれ、やめてくれ」と叫んでいたという。

 

何十年も前に読んだ教科書、「ごんぎつね」のラストを覚えているでしょうか。この本は失いかけた日本人の心のふるさとを語ってくれている。

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