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ファイザーがアラガンを20兆円で買収、ここまでやるか租税回避

今年最大の買収劇、これでファイザーは世界一の製薬会社となる。とメディアは伝えている。しかし法的にはアメリカのファイザーがアイルランドのアラガンを買収するのではなく、現金は一切使わず株式交換の手法で、アラガンがファイザーを吸収するのである。つまり「小」が「大」を飲む。不思議なことに、ファイザーが消滅会社になってアラガンが存続会社になるが、新社名は「ファイザー」、CEOもファイザー、もっと言えば事業本拠もニューヨークである。

 

なぜこんな事になったのか?理由は簡単。ファイザーの本社がアイルランドになったため、アメリカの税率35%ではなく12.5%の法人実効税率を享受できるからだ。かねてよりファイザーCEOイアン・リードは利益を生み出すにはコストカットをしなければならない、最大のコストは税金だと言って憚らなかった。ファイザーは売上、利益を上げるのに吸収合併を繰り返してきた。ワーナー・ランバード、ファルマシア、ワイス、ホスピーラと次々M&Aを行った。これがいわゆる「ファイザーモデル」と言われた。最後の総仕上げにアラガンで、遂に登記上の本店所在地がアメリカを去った。

 

考えてみれば、世界最大のビール会社はバドワイザー(アンハイザー・ブッシュ・インベブ)もアメリカに工場を残したまま、登記上の本社はベルギーに移った。皆、理由は明白である。「税」である。

 

今回、特筆すべきは、ホワイトハウスが、節税目的での海外企業の買収を規制すると発表した直後だった。いかにもアメリカ企業が政府を挑発するような出来事だったが、それにも訳がある。3年前オバマ再選の時の大統領公約に「法人実効税率は28%以下にする」とあった。一向に実現の目処がたっていない。民主党のヒラリー・クリントンはファイザーを強く非難したが、共和党は税率を下げない限りこのような事態は更に続くとしている。

 

日本の法人税率も先進国ではアメリカに次いで高い。世界的なグローバル企業も日本には多いが、なぜか海外に本店を移さない。日本の文化なのか…と思えば、そうでもない。日米税制の違いである。トヨタや三井物産をはじめ世界的な企業は税率の低い外国現地法人に利益を落とすようにして、登記上の日本法人には利益をあまり落としていない。それは海外現地法人が外国法人税を払った残りの利益を日本法人に振り替えても、ほとんど日本の高い法人税がかからないからである。アメリカはまともにかかる。アメリカ並の法人税制にすれば、日本法人も海外に逃げ出す企業が相次ぐのは想像に難くない。しかしその恩典のない個人の所得税や相続税は大変である。キャピタルフライトが後を絶たないので出国税まで設けて、阻止しようとしているが。止まないのが現実である。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
清水真人著 『財務省と政治 「最強官庁」の虚像と実像』 中公新書 880円+税
財務省という呼び名は、橋本龍太郎首相が大蔵省から変えた。いわゆる橋本行政改革である。その時に内閣府が創設され、経済財政諮問会議が設けられ、その後、小泉純一郎首相や竹中平蔵氏が大胆な改革、組織変更するに及んで財務省は昔の大蔵省ではなくなった。
かつて「官庁のなかの官庁」と言われた大蔵省は各省庁の予算を握り、豊富な情報力をもとに時の政権と組み、全国の利益団体、そしてその族議員を牛耳ってきた。自民党総務会をはじめ「縦割り、積み上げ、全会一致」をもとに敵を作らない方式で主導してきたが、橋本行革以降崩れ始め、第2次安倍内閣では、日銀人事を始め財政や税制もすべて官邸主導になっている。政治と財務省のスタンスを考える面では一考に値する書である。

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