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日本の相続税白書、海外脱出止まらず

このほど国税庁の発表によると、昨年度の相続税調査は1万1909件、このうち申告漏れは9809件(83%)だった。申告漏れの遺産は合計で3087億円、1件当たり申告漏れ遺産は2592万円、追徴税額は計539億円、悪質な脱税件数は1061件と発表。毎年少しずつではあるが減少傾向にある。

 

ところが「海外資産関連事案」に係る調査件数は毎年増加している。海外資産関連調査では調査件数が753件、内、申告漏れ704件、海外資産の申告漏れ遺産総額163億円となっている。この163億円は前年度比520%増というので驚きだ。単純な海外資産隠しが多い。海外預金1億5000万円を相続財産から除外した例では、相続人の父(被相続人)が生前せっせとシンガポールの銀行に日本から送金していた。これは税務署で国外送金等調書からわかる。税務署が調査で相続人に問うと「父のしていたことは全くわからない」と答えた。税務署がもっと調べると、父の死後、現地で父の預金口座から自分の預金口座に移管している。これは本人の自白である。

 

なぜ脱税に失敗したのか。この相続人は父の死後シンガポールへ頻繁に行っている。この種の税務調査を受けた人なら学習しているが、税務署は出入国記録を見るのである。つまりパスポートに「出国日」「入国日」がスタンプされている。今や、税務署は特権で出入国管理局から記録を入手できる。筆者も何回も見たが、見事である。きれいにその者の記録が日付順に印字されている。この脱税者は多分そのことは知らなかったのであろう。だから父の死後、何回も無警戒に渡航したのだ。

 

次に「自動的情報交換資料」というのがあって、だいたい非居住者の預金の利子については源泉徴収しない。どの国も源泉徴収しない非居住者預金の名前と国別、これはお互いに外国税務当局との間で毎年交換しているが、件数は50万件もあって調査に手間がかかるものの、その気になれば時間をかけると炙り出せる。また、ある種のテクニックでこれを逃れようとする不届きな輩も出現している。税を取る方と納める方のイタチごっこは先進国の宿命か。いつまでも続くような気がする。

 

 

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人口減少に日本は歯止めがかからず、消滅の可能性のある都市が指摘される。15歳~64歳の、いわゆる生産年齢人口がどんどん減少するのでデフレは止まらず、住宅価格も下がる。現在と同じ住宅価格を維持するために必要な生産年齢人口は、2040年には東京都で394万人、全国では3600万人に膨れる。75歳まで働くにはどうすればよいのか。地価は維持できるのか。移民はどれくらい入らないといけないのか。2020年東京オリンピック後の危機、少子高齢化社会の驚愕のシナリオを国際的に有名な教授が指摘する。

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