私は昨夜ロサンゼルスのビバリーのレストランで、テレビを見ながらドジャースとフィリーズの試合を観戦後、帰国したので、ブログを書くのが少々遅れた。この大谷のいるドジャーズだが、ニューヨーク(NY)タイムズでは、ヒスパニック系住民との間で軋轢が生じているという記事が掲載された。ロサンゼルスでは、今年の6月以降トランプ政権により不法移民の取締りが厳しくなっていて、ヒスパニック系移民が多く住む街では、教会への礼拝、仕事、ショッピングをする人が少なくなりゴーストタウン化しているのである。このような状況を見かねたMajor League Soccerのロサンゼルスのチームは、ヒスパニック系コミュニュティと連帯する声明を出した。また、Women’s Soccer LeagueのロサンゼルスチームもImmigrant City Football Clubと書かれたTシャツを1万枚ほど配布した。ところが、ドジャーズのファンベースは40%がヒスパニック系住民にも拘わらず、ドジャースは無視・沈黙したままである。
これにはロサンゼルスのヒスパニック系移民社会は裏切られた気持ちになっているようである。唯一ヒスパニック社会を支持するとコメントした選手は、ドジャースのKike Hernandezである。ヒスパニック系移民の間では、今年4月にドジャーズがワールドシリーズ優勝を祝いたいとトランプ大統領からの招待を受け、ホワイトハウスに行ったことを怒っている。ドジャーズからはヒスパニック系社会に対して慰めの言葉が一言もないとして、あるヒスパニック系のラジオ局は、ドジャーズの試合の観戦をボイコットしようと呼びかけた。更に、6月に行われたドジャーズの試合で、ヒスパニック系歌手Nezzaが、試合前のアメリカ国家斉唱をスペイン語で行ったことが波紋を呼び、ドジャーズもついにメディアを通じ、移民をサポートする声明を出し、国外追放により影響を受けた家族に対し100万ドル(1億5千万円)の寄附をすると発表したが、今だに詳細は不明である。
これに対しトランプの右腕であるホワイトハウス副主席補佐官Stephen Millerが設立した非営利団体American First Legalは、ドジャーズに対しDiversity, Equity and Inclusive(DEI)をよそおい、明らかな不法な差別をして市民権侵害をしていると訴訟を起こしている。ドジャーズこそ、黒人メジャーリーガーの先駆者であるJackie Robinsonから始まり1980年代にはメキシコの剛腕Fernando Velenzuelaが在籍しており、正に伝統あるMulticultural Franchise なのだが、時代が変わったのか。
元々のオーナーのWalter O’Malleyがドジャーズをニューヨーク・ブルックリンからロサンゼルスに移転させた際、この球場のある場所は、昔ヒスパニック系住民の多い土地だったが、最近のドジャーズを観戦すると、明らかにファン層に変化が見られる。それは以前のようにラテン系や白人のファンがドジャードッグを食べる姿から、多くのアジア人が大谷の名前入りのユニフォームを着て、球場の「銀だこ」のたこ焼きやおにぎりを食べているが、ヒスパニック系のファンベースは根強いものがあると思う。今年のドジャーズの観客動員数は創設以来初めて400万人を超えた。(これは大谷効果によると思われる)また、ドジャーズの選手の給与合計は約3億5000百万ドル(520億円)を超え、MLBで最も高額となっている(日本のプロ野球とはゼロが一つどころの違いではない)。2025年度のMLBのサラリーキャップ基準が2億4100万ドル設定されているので、ドジャーズが支払うLuxury Tax (ぜいたく税、正式にはCompetitive Balance Tax (CBT)と呼ばれる。)は、1億5600万ドル(230億円)になると予想されている。ヒスパニック社会からは、このように繁盛し、驚くほどの税金を払っているドジャーズが、熱烈なファンの多い、ヒスパニック系社会が瀕死の状態であるにも拘わらず、わずか100万ドルの支援しか表明していないことについて、ニューヨーク・タイムズは相当複雑な心境であると伝えている。
★ 推薦図書。
ニール・シーマン著 庭田よう子訳 「起業中毒」東洋経済新報社 2200円
この本の原題は「ACCERATED MINDS」である。起業家に自殺者が多い。起業家の7割はメンタルヘルスに問題がある。原因は脳内科学物質のドーパミンであり。ドーパミンのレベルが高いとエネルギーも高まる。低いと反応が鈍くなり無関心になる。起業家に多いのは、もちろんドーパミンは高く激しい、そうなると「世界は自分を中心に回っている」と確信し、もっと頑張れば、企業はもっともっと大きくなるなど、妄想的に信じるようになる。事業の失敗は心理的な苦痛を生み出す。しかし成功しても苦痛を生み出す。成功は一層の責任をもたらし、期待を高める。その期待に押しつぶされる人が多い。起業家は「快楽主義者」と「禁欲主義者」に大別できる。「快楽主義者」は失敗を他人や外部の要因に転嫁するので次に進める。「禁欲主義者」は自分のせいで失敗したと考える。そのため不安や自己批判、ついにはうつ病を引き起こすのである。