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Serena Williamsの罰金と税務処理・アメリカ

私は9月初めから超忙しく、アメリカ→大阪→オーストラリアと渡り歩いたのでブログは2回休んだ。その間に書こうと思ったのだが、日本の地震と台風で対応に追われた。さらにはオーストラリアで、全米オープンで二重国籍の大坂なおみが優勝したのを観たが、何やら試合が異様な雰囲気に包まれていた。それはSerena Williamsが審判にしつこく食い下がり抗議を行い、しかも観客までもがそれに乗った場面であった。その後のCBSニュースで全米テニス協会は、Serenaに3つの規則違反があり1万7000ドルのペナルティを課したと発表した。審判に対する侮辱で1万ドル、試合中、コーチにアドバイスを受けたことによる4000ドル、そしてラケットをコートに叩きつけたのが3000ドルということである。

 

これらのペナルティはSerenaの来年の確定申告において必要経費になるのかどうかについて、アメリカのフォーブスは損金計上できると書いた。フォーブスによれば、Serenaの職業はテニスプレーヤーなので、この1万7000ドルはOrdinary and necessaryな支払であるので、経費の要件を満たしている。日本でもアメリカでも法律違反の罰金は経費としては認めない。しかし、彼女は全米テニス協会の規則を破ったかもしれないが、法律を破ったわけではない。州や政府に支払うわけではないので問題はない。NFL、NBA、MLBに対する罰金の支払いは経費で落とせる。これは日本のプロ野球でも同じだ。

 

一般的には、アメリカ政府に支払うペナルティは経費として控除できないのが原則である。アメリカの税法Section162(f)では民事であろうと刑事であろうと、法律違反をした結果の罰金については経費性がないと記されている。日本での交通違反の罰金は営業中であっても経費には落とせない。ところが、アメリカでは多くの企業が政府と交渉して経費控除ができない部分を小さくし、控除できる部分を大きくしている。例えば、British Petroleumがメキシコ湾で原油流出事故を起こした際、208億ドル(2兆2000億円)の政府との和解金の内55億ドル(6000億円)がClean Water Actのペナルティとして控除できないことになっているが、残りは控除できた。

 

このように企業が間違いを起こしたことによるペナルティが控除されるのはおかしいとする人々も多いが、損害賠償金、そしてさらには、懲罰的賠償金をも経費控除されているのがアメリカの実情である。つまり特定のペナルティだけが控除できないだけである。

 

最近は和解契約書の中に、控除されないものが列挙されつつある。例えば、司法省はアメリカ人の脱税を幇助したクレディスイス銀行との和解契約書の中で、26億ドル(3000億円)は控除できないと明確に記されている。BNPパリバとの和解契約書でも同様の記載がある。2013年にJPモルガンとの和解契約書には、和解金130億ドル(1兆5000億円)のうち20億ドル(2300億円)しか控除できないと記載されていて、わかりやすい。

 

そういうことでBritish Petroleum事件では、和解金のほとんどが控除できるのはおかしいと批判している。Serenaにしても税法上は控除できるが、2018年の新税法ではサラリーマンはビジネスにかかわる支払いも控除できなくなる。Serenaはサラリーマンじゃなく事業主だから控除できるのであって、トランプ新税制はアメリカの給与所得者にとって辛いものになる。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
野中圭一郎著 『犬が教えてくれた素敵な物語』 三笠書房 680円+税
私は犬をずっと飼っている。犬好きであるので、書店で目に飛び込んできてすぐ買った。素直な気持ち、優しい気持ち、信頼し合う喜び、あたたかい温もり。当たり前の毎日の素晴らしさ、犬は、私たちに多くのことを教えてくれる。この本は、そんな「特別な物語」を集めたのである。
著者の愛犬はコロ。「今までコロの話す声を聞いたことがないんだ。相手は犬だから当然といえば当然。けれど確かに散歩の道すがら、現在の悩みや将来の夢、今日あった出来事について、たくさんの話をし、コロの優しくて、ちょっととぼけた感じがする声を聞いた気がするのです。実際には言葉を交わしたことがないのに、たくさんの言葉を交わしている。私にとってコロはそんな存在だったと思います」
15の「犬と人の物語」。よき友、兄弟、家族として、大切な絆がそこにはある。愛犬を思い浮かべながら読んでほしいと著者はうたっている。

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