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オランダの巻き返し、成功なるかどうか

タックスヘイブンの温床だとか、脱税幇助国だとか、第二次世界大戦後さんざん非難を浴びた国、オランダであるが、日本もオランダを巻き込んだ国際的節税事件は多くあり、また、裁判事例もこれほどある国もない。株式にまつわる税は全くなく、世界の多国籍企業の関連会社もオランダに数多く集まっている。

 

しかしオランダも、あまり名誉なことではないので、体面上、本年からかなり税法が改正された。オランダ財務省は、金融サービス会社(Financial Service Compensation Scheme = FSCs)による租税条約やさまざまな不適切利用に対処するための新法を公表している。最近世界的話題となっているOECDの税源侵食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting = BEPS)に対して、国をあげて貢献しようと試みているとしている。

 

例えばFSCsが要件を満たさない場合、オランダはその会社の本国に自動的にFSCsの情報を提供する。そして、事前確認(APAS / Advance Tax Rulings = ATR)が公表され、オランダ政府はFSCsが実体要件を満たすかどうか、監視、監督を強化するとしている。

 

FSCs(金融サービス会社)はオランダ内国法人でオランダ納税法人である。オランダ国外との利子、ロイヤリティー、賃貸リースなどの事業をするものであり、限りなく法人税はゼロに近い。そのため、アメリカ、日本をはじめさまざまな国の子会社が置かれることが多く、また、オランダはその見返りの経済的利益を享受している。ちなみに新法による、実際に活動が行われているかの実体要件は以下の通りである。

 

①取締役会のメンバーの過半数がオランダ居住者であること
②取締役会のメンバーは十分な業務遂行能力を有していること
③取引を実行できる能力のあるスタッフを有していること
④取締役会がオランダで開催されること
⑤重要な銀行口座が会社名義でオランダにあること
⑥経理がオランダで行われること
⑦オランダでの納税義務を順守すること
⑧登記上も実際もオランダに事務所を置くこと
⑨金融、ライセンス、リースなどの十分なリスクを負っていること
⑩リスクに見合った資本を有していること

 

以上であるが、何とバカバカしいことであろうか。これでは社員1人の会社でもOKである。①~⑩は日本法人であれば、どの法人もクリアしている。こんな子供だましみたいな新法を公表し、これに違反していなければ本国法人に通報しないし、今まで通りタックスヘイブンのうまみを享受してかまわない。念のいったことに、これらに違反した会社でも、19,500ユーロ(270万円)を上限とするペナルティーで済むとしている。

 

これでオランダはOECDに協力しているといえるのであろうか。江戸時代の鎖国でもポルトガルとオランダだけは貿易を許された。国土が狭く、大半が海面下の国のしたたかさを今回の租税逃れ防止法に見た。日本もTPP条約の参考にしたらどうだろうか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
武井一喜著 『同族経営はなぜ3代で潰れるのか?』 クロスメディア・パブリッシング 2280円+税
オーナー経営者なら知っておきたい「売上・利益アップ」「資金繰り」よりも必要なことがある。創業家やオーナー家がその強みを発揮するうえで、特に重要なのは二代目、三代目の役割である。アメリカでのことわざに「三代経つと手元にはシャツ一枚」というのがあり、同族の経営が二代目に引き継がれているのが30%、三代目まで続くものは12%という調査結果がある。三代続くことは素晴らしいが、ただ運が良かったというに過ぎない。ファミリー(同族・家族)の本当の実力はそこから先が続くかどうかだという。同族経営の本当の実力は200年のスパンで見るべきで、同族の経営者の決断が7代先の子孫に感謝されなければならないと、アメリカの原住民の長老会議で祈るそうである。
筆者は慶応大卒、コロンビア大学のMBAを取得した中小企業オーナーの息子である。その観点からの著であるのでおもしろい。

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