ブログ

トランプ政権下のアメリカ年金事情

日本では今、国会でも大きなテーマである社会保障問題、現実には年金として高齢者になれば年金が受け取ることが出来るが、国民年金で月6万円程度、厚生年金で20万円程度、この程度の月収で物価が上昇する将来、果たして暮らしてゆけるのだろうかと不安になるのは当たり前である。このため60歳でいくら預貯金がなければならないか等の書籍が巷にあふれている。一方アメリカではどうだろうか。アメリカの退職者の生活の拠り所となっているアメリカ社会保障制度上の老齢年金だが、2026年度は物価調整により 2.8%その受給額が増加すると発表があった(日本の年金がインフレにスライドすることは絶対ない)。2024年度の2.5%の上昇に比較し、少し増加している。この物価調整はアメリカ労働省が毎年第3四半期の物及びサービスの物価上昇率を観測したものをベースにしている。最近ではコーヒー、カカオ、生鮮食料品、光熱費、中古車の販売価格が上昇していることを反映している。最近の物価調整率では、2023年度の8.7%が過去40年間で一番大きな数字となっている。
アメリカには5300万人ほどの老齢年金の受給者がおり、平均受給額は2064ドル(30万円)となっている。アメリカの場合は、そのほか401Kでの年金引き出しがそれよりも多いのが通常である。年金の満額での受給は67歳まで待つ必要があるが、それよりも政府が十分な積み立てを行っていないため、近い将来受給額が3分1減るなどとも言われており、アメリカの年金制度も厳しい状況にあるのも事実である。また、アメリカでは社会保障制度の一つとして、65歳になると国民保険に似たような制度でメディケアとよばれる制度に加入する。メディケアには大きく分けて病院治療、ホスピスケアに関わる病院保険としてPart A、医療保険としてのPart Bからなり、Part Aには保険料はかからないが、Part Bは有料で、どのような保険に加入するかにより保険料は変わる。今回、アメリカ政府は、2026年度にこのPart Bの保険料が月 21.5ドル(3000円)程度増加する予定と発表した。これは今回老齢年金 が2.8%増加したとすると月平均58ドル増加、この内21.5ドルがPart Bの保険料にとられるので、その割合は37%となります。これはなり大きな割合といわれている。
全米退職者協会(AARP)によれば、退職者の75%は毎年5%の物価調整による上昇が生活水準維持に必要であり、わずか25%以下が3%の物価調整で生活水準を維持出来ると考えている。退職高齢者にとって2010年から2021年までインフレ率はほぼゼロであったので、昨今のインフレに年金が追い付いていなく、ショック状態と言えるとメディアは伝えている。
税金に目を移すと、確定申告では、日本は年金収入は全て雑所得扱いで、年間収入から公的年金控除を差し引いた後の金額に他の所得と合算し総合課税となる。アメリカは日本の課税方式とは全く異なり、アメリカの老齢年金はその人の全体の年間収入でどれだけの割合が課税されるかが決まる。例えば、退職者が401Kからの引き出しが年間4万ドル、老齢年金受給額が毎月1500ドル 、年間で1万8000ドル、年収の計算にあたり、老齢年金受給額の50%のみがカウントされるので、1万8000x50%で9000ドルがカウントされ、この人の年収は49000ドルとなるのである。現在のアメリカ税法では単身者の2万5000から3万4000ドル、既婚者の場合3万2000から4万4000ドルまでには受給額の50%まで、また単身者は年収3万4000ドル、既婚者は4万4000ドルを超えると受給額の85%が課税対象となる。この人の場合、年収が4万9000ドル(730万円)となるので、1万8000ドルの85%に対し課税される。少し面倒な計算だが、老齢年金は非課税ではない為、税制により影響を大きく受けることになる。更に、我が事務所があるロサンゼルスで言えば、ランチをレストランで食べる場合には、そば・うどん、カレー屋でさえ、どのメニューも平均20ドル(3000円)はする。これに売上税10%、更にチップ20%を加算し、合計で26ドル(3900円)、夫婦で食べれば52ドル(7800円)という計算になってしまう。日本では物価が高くなった、高くなった、というが先進諸国から見れば、まだまだ物価が低いのである。町のカレー屋に二人で入って、一番安いカレーを注文して7800円はありえない。夕食であれば二人で2万円がロサンジェルス市民の常識である。日本は本当は物価の高さが問題ではなく、国民の所得が低すぎるのである。この自覚が日本人に少ない。従ってアメリカのように公的年金であっても、少なくとも物価の上昇に合わせた年金を支給する。少しでも生活の不安を取り除く処置を講ずるのである。一方、日本はご存じのように社会保障費の国民負担は年々増加するが、もらう側の受取年金の増加はありえない。通常国会の論戦にも、この声は聴けない。財源がないのである。貧しい国になった。

★ 推薦図書。
中田賢一郎著 「幸せな最後の迎え方」 アチーブメント出版 1540円
著者は医師であり、浄土真宗の僧侶である。5000人超を看取った終末医療のスペシャリストである。
人生には限りがある。その終わりが必ず訪れ、避けることは出来ない。どれほど裕福であっても、時間だけは平等に流れ、やがて尽きてゆく。著者は「あと何年生きる」と自分で寿命を勝手に決めていると人生は大きく変わると説く。残り時間を「見える化」にすることで、やりたいことを後回しにせず、家族や大切な人との時間を優先できるようになる。残りの人生の優先順位が整理され、時間の使い方が鮮明になってくる。さらに本書では健康実用書のように血管を守り、突然死を避ける生活習慣も載せている。人生、最後まで「やりたいことをやりきる」。これが結論であると。

関連記事

  1. アメリカ人の最近の相続税対策~その1~
  2. 相続税廃案、つぶれた本当の理由、アメリカ
  3. 来年度税制、日米の差
  4. 国外賃貸不動産の規制で、コンテナに人気が集まるか?
  5. 副業で節税対策が増える
  6. 富裕層の日本脱出にストップか、国税庁
  7. トランプ大統領候補の節税対策~最終回~

アーカイブ

PAGE TOP