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日産自動車、国税局相手に訴訟、タックスヘイブン税制で

今回のブログは国際課税、かなり難しい。GAFAなどはアイルランド、オランダ、ケイマン、パナマなど、非常に法人税率の低い国を活用し、アメリカ本社の税負担を抑えている。日本もそれらの国を利用して税逃れをする会社を防止するための税法を作り、国税庁は監視を強化している。日本の法人税率は今や40%を切っているが、40%であった何年か前に日本の税率の半分以下の国を低課税国として、つまりタックスヘイブン国と定義した。当然、香港やシンガポールもその範疇に入る。誰でも考えることだが、そのような国に会社を建て、そこに利益を集中すれば、ほとんど税金を払わないで済む。
国としては、そのようなことを許してなるものかであり、実体のないペーパーカンパニーなどの海外子会社の利益は、日本で生じた利益とみなして、日本の利益として課税する、いわゆる「合算課税」を行うのである。その子会社を「外国関係会社」と呼ぶが、今回の舞台は平成28年であるから。「特定外国子会社等」と当時は呼んだ。この外国子会社合算課税(CFC税制)の対象となる日産自動車の外国子会社は、メキシコとバミューダにある。日本の税制では、馴染みが無いが、欧米諸国の場合、入ってきた収入を大きく二つに分類する、これは法人個人も一緒だ。Passive Income(受動的所得)とActive Income(能動的所得)、前者は配当収入、利子収入、家賃収入などで、額に汗せずして入ってくるもの、後者は働いて得る収入である。ペーパーカンパニーの場合は、間違いなく前者で、これは合算課税の対象になる。つまり会社としての実体がないとみなされる。実態があるかどうかの判断が難しいため、税法では外国子会社の実体基準を細かく定めている。今回の問題は、再保険会社(NGRE社 バミューダ本社)が保険会社として実際に活動をしていたのかどうか、NGRE社の収入のうち50%以上を日産自動車関連で占められているとアウト。難しい税法、後に改正されたが当時、租税特別措置法施行令第39条の117⑧五に「全収入のうち50%以上が、関連者(つまり日産自動車グループ)以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険にかかるもの」だと合算しなくてもよい。日産自動車の子会社でNRFM社(メキシコ)は自動車を購入する顧客に資金を貸し付け、その代わり保険に加入させる。顧客が他の保険に加入しない場合は、NRFM社はAVM社(非関連者)との間に締結した保険に加入することになっていた。AVM社は、元受保険契約上引き受ける全保険リスクの70%をNGRE社に出再する契約をNGRE社と締結した。国税局は、元受保険は、子会社であるNRFM社が顧客に対して有する債権を保険目的であるから、前述の非関連基準を満たさない、として追徴課税に踏み切った。これを不服として日産自動車は東京地方裁判所に国を訴えたのである。話が長くなるのでこのあたりで終わるが、つぶさにこの裁決を見ると、当時カルロス・ゴーン社長は改めてすごかったと思うのである、このスキームは国際税務のプロでも、なかなか解き明かせないほど複雑で、各国の税制の隙間をついている。難しいが参考になる、ソフトバンクも国際課税については国税局と裁判をしているが、複雑さでは、まだまだだ。国際税務プロを目指すものにとって、この裁判は勉強になるはずである。

☆ 推薦図書 ☆
古小路勝利著 「理想の引退」 同友館 1600円+税
この本は、すべての経営者が知っておくべき理想の引退を迎えるための心得を謳っている。サラリーマンは定年という「引退の日」が会社によって決められ、勤めた時間の長さと、貢献度により、退職金が定年と同時に支払われる。中小企業は2025年には、後継者不在で廃業を余儀なくされる会社は127万社にものぼる。中小企業のオーナー経営者は、ほとんど365日24時間仕事体制で、会社を守るために心身をすり減らし、休むことさえできず、ましてや辞めることさえ出来ないのが現状である。「なぜ、引退しないのか」「なぜ、引退できないのか」「なぜ、引き継げないのか」
経営者だけが抱える誰にも言えない矛盾と不安を、経営者のためだけに、しかも引退後の安心した心豊かな暮らしまでも、この本は解説している。この本を読んで感じるのは、一生サラリーマン、あるいはサラリーマン社長には、絶対理解できない部分がある。著者は私の知人であるから、あえて言うが、引退の決断には伴侶の存在は非常に大きく、それを付加すると、完璧な名著である。

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