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アメリカ人の複雑な海外資産・税務申告事情

アメリカでは海外に何らかの資産を持つと、申告書の他にInternational Information Returnという海外の資産活動の詳細の報告書を申告書と共に申告を行わなければならない。例えば、アメリカ人(グリーンカードホルダーを含む)が海外の投資資産を、トラストを利用して所有し、実際海外の証券会社でトラスト名義で口座を設定するとなるとそれだけで、まずはこのトラストの資金の動きを記載するForm 3520、トラスト自体の情報を記載するForm 3520-A、海外資産情報を記載したform 8938を申告書とともに提出しなければならない。アメリカ財務省に対し海外金融口座を開示するReport of Foreign Bank and Financial Accounts(FBAR)の提出も必要となる。
海外にどのような資産を持つかで様々なInformation Returnを申告書に添付する必要が出てくる。もし、このようなInformation Returnの提出をしていない場合、それぞれにペナルティが課される。しかしその場合には救済プログラムがある。単なるミス、不注意等で意図的ではない場合、例えば、会計士に依頼し、海外資産の状況もその会計士に開示をしているにも拘わらず、会計士がInformation Returnの提出をする必要がないとアドバイスをして、提出していないような場合である。その場合、Streamlined Filing Compliance Procedure (SFCP)というプログラムを利用し、それまでの未申告の海外資産の報告を行う。これによりある程度の罰金を払うこともあれば、納税者が過去3年間、海外に殆ど居住している場合には免除される場合もありうる。
もし意図的な場合にはVoluntary Disclosure Program (VDP)で開示を行うことになる。この際、未申告のInformation Return、申告漏れの収入等につき 修正申告書を提出することになる。これにより刑事訴追は免れるが、最も課税額の高い年の課税額の75%を罰金として支払うことになる(日本では考えられないが)。 また、このような海外資産隠蔽を勧めた仲介斡旋業者やあるいは個人の名前を開示しなければならない。
SFCP やVDPの他に Delinquent International Information Return Submission (DIIRS) procedureや Delinquent FBAR Submission Procedure 等あるが、それぞれに手続き方法及びその資格が異なり、そうなると、やはり税法専門の弁護士に相談・依頼することになる。いずれのプログラムもIRSから通知を受ける前に手当しなければならない。すでにIRSのレーダー下にある納税者は、このようなプログラムを受けることが出来ないのである。アメリカ人やアメリカ居住者が海外に資産を持つ、会社を持つと本当にアメリカでの申告が複雑になる。日本の比ではない、日本の場合は国外財産調書程度のものである。アメリカでは海外資産申告に通じた会計士に説明し、どのようなInformation Returnが必要か相談することが非常に大切になる。下手をすると収監される恐れがある。

☆ 推薦図書。
加藤俊徳著 「中高年が朝までぐっすり眠れる方法」 アチーブメント出版 1496円
著者は脳内科医である。「お酒を飲まないと寝られない・・。」「睡眠薬が手放せない・・・」などなど。実は6時間以下の睡眠は徹夜と同レベル、10年生存率が約20%下がる。著者は1万人以上の脳を診た名医で、結論として正しく眠らないと脳と体は劣化する。統計によると、うつ患者の8割は睡眠障害、睡眠時無呼吸症候群は心筋梗塞・脳卒中のリスクが5倍などなどである。なぜ眠れないのか、この本は睡眠を改善する3つの療法、眠れるようになる7つの習慣を書いてある。良い睡眠を得られなければ、どんなに頑張って努力しても無駄に終わる。人の悩みの9割は睡眠不足から発生している。この本を読めば「幸福な脳」なってくれると。

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