アメリカでは高いインフレ率を反映し、社会保障手当であるSocial Security Benefit(年金)の受給額が生活費調整として2023年度より8.7%の引き上げを発表した。日本では物価高でも年金は変わらない。据え置きである。アメリカは7000万人以上といわれる年金受給者にとって、平均で毎月年金受給額が140ドル(2万1000円、年額25万円)以上増える計算である。これは年金受給者にはかなりの恩恵となる。
また、IRSは2023年度の課税所得区分及び基礎控除を変更したと発表があった。まず、連邦個人所得最高税率37%(日本は45%)に適用される所得額は、2022年度より7%上げて独身者では578,125ドル、婚姻者では693,750ドル以上(1憶1000万円、日本は4000万円以上45%)となる。また、基礎控除も2022年より7%上昇し、独身者で13,850ドル、婚姻者で27,700ドル(410万円、日本は38万円)となる。今回のインフレ率は過去40年間で最も高いということもあり、今回の税法の調整もいつもより大きくなっている。これらの調整は1985年以降議会で定められた計算式に従い自動的に行われる、2017年の税制改正でさらにこの調整度合が大きくなっている。
今回の自動調整は2023年度から適用されるので、2023年1月の給与所得の源泉徴収額が調整され、実際の可処分所得が大きくなる。今回大きく調整された基礎控除及び課税所得区分は2023年度の申告から使用出来る。また、この他に自動調整される税金項目として、相続税基礎控除額が2022年度1206万ドル(18億円)から2023年度1292万ドル(19億5000万円)に引き上げられ、日本の基礎控除4800万円とは雲泥の差である、毎年非課税で贈与出来る金額が日本では110万円だが、16,000ドルから17,000ドル(255万円、夫婦合算で510万円)に引き上げられる。また、 Social Security Taxの対象となる給与額上限を147,000ドルから160200ドル(2400万円)に引き上げると発表している。アメリカは納税者に優しい国である。故に国民の可処分所得は物価高でも増える。
このように多くの税金控除枠が引き上げられているが、自動調整されず据え置かれている項目もある。例えば、扶養児童税金控除額だが、これは2,000ドル(30万円)のままである。また、キャピタルロスを通常の個人所得と相殺出来るのは3,000ドル(45万円)までだが、これも調整されていない。また、州税及び地方税の控除の上限も10,000ドルまでで、これもそのままだが、調整されない控除額は微々たるものだ。
今回の税法上の調整は、インフレにより上昇した所得が侵食されないよう取り計らわれたものだが、勿論全ての納税者の賃金が上昇しているわけではなく、寧ろ所得増加していない世帯も多いわけだが、そのような世帯に対しては、今回の調整により課税が少なるという恩恵を受ける仕組みになっている。確かに全ての税金控除項目が引き上げられるわけではないが、アメリカ的な合理的な課税調整システムである。一方日本は、来年度税制を見ても増税ばかり、北朝鮮や中国の脅威に対して毎年防衛費の増額があるので、自民党税制調査会では個人の増税に頼ろうとしている。資産税増税である。物価高に対して、一人いくら配るかが問題であるとしているが、個人の税や社会保険料の減税を言わない。年金生活者の年金増額も言わない。野党も統一教会を追求するが、アメリカのこのような税優遇や年金増額をとなえる議員はいない。新聞マスコミも黙っている。貧しい国、日本なのか
★ 推薦図書。渡辺靖著 「アメリカとは何か」 岩波書店 946円
アメリカは独立以来、中央集権的な国を嫌った。イギリスのように中央集権になると国民が搾取されるのではないかと。しかし各州がバラバラだと軍事面でもリスクがある。そこで国家としての力は与えるが、中央政権の権力を憲法で規制する。つまり三権分立制度である。そして各州に力を与え。州ごとの憲法、軍隊、選挙などの制度を創設したのである。そうした独立後の出港であっても決して平たんではなかった、独立宣言に「全ての人間は生まれながらにして平等である」としたが。黒人や先住民は迫害、差別を受けた。最近は「保守派」と「リベラル派」が対立している。リベラル派ではないプーチンは移民の受け入れを拒み、自由・公正な選挙などを謳った活動家の規制を強化、習近平は中華民族の偉大な復興をテーマに掲げている。もっと反リベラルなのはトランプだ「アメリカを再び偉大に」で閉塞感を強めていたラストベルトの白人労働者を再び選挙の場に引き戻した功績は大きい。ファシズムは国民を「我々」と「奴ら」に分断し、後者を排除することで市民の共感を得る、これはトランプの政治手法である。中ロのトップが民主主義を否定する根拠でもある。