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G20、法人課税の歴史的合意はアメリカにとって損か

先日G20財務相、中央銀行総裁会議で、法人課税において歴史的合意との記事が日本も含め、あらゆるメディアで騒がれた、しかしWall Street Journal には今回のGlobal Taxの合意はアメリカにとってよくないとの報道が載った。先にOECDが事務レベルで合意した内容をG20が承認するとしたものだが、6月にG7で大枠での各国の財務長官や財務大臣が合意しており、7月に入りインドや中国にも賛同を取り付けているというものである。10月には最終合意に至りたい考えだ。
今回の課税内容はPillar One及び Pillar Twoに分かれている。Pillar Oneは主に巨大ハイテク企業に対するデジタル課税に関するもので、Pillar Twoは世界各国の最低税率を15%に設定するというものである。ここで問題になるのが、どこの会社が何の収益をベースに、どのような控除が行われ、どのように課税されるかだ。ここで注意を払う必要があるのは、米国財務長官のJanet Yellenの提案内容がG7での合意と、その前に言っていたことが違うことにある。Yellen女史は G7前にはPillar Oneに該当する企業は売上200億ドル(170億ユーロ、2.2兆円)、税引き前利益率が10%以上ある企業としていた。ところが、G7では売上が100億ユーロの企業に下がっていたのである。 これがYellen女史の交渉戦略なのか。また、OECDの案では明らかにG7で合意した内容よりも、米国のハイテク企業に焦点が充てられている。しかし、よく見ると、鉱業やフィナンシャルサービス等特定の産業がPillar Oneの例外となっている。これは英国の要求と言われている。
あからさまなのは、OECDは何とかAmazonに課税をしたがっている。しかしAmazonは利益率が6.3%であるためPillar Oneには該当しない。ここでOECD は“Segmentation”と称し、Amazonを含めようとしている。このSegmentationは会社全体として売上や利益率が満たされなかったとしても、その会社のビジネス単位をみて、政府はTech Taxを適用できるというものである。これでいくと、Amazon全体ではなく Amazon Web Service Divisionが課税対象となる。これはフランス政府の要求であると言われている。
その他の問題としてインドと中国がある。彼らは最終合意に至らせる為に自分たちに有利な条件を突き付けて来るかもしれない。特に中国には相当なコストがかかるかもしれない。Tech Taxや世界ミニマム課税は自分たちだけを例外とするような骨抜きに合意書に署名をすることになりかねない。バイデン政権は世界的に競争力を失うことなく国内の法人税率の引き上げることが出来る世界課税に合意をしようとしているが、実際そのような方向にはいかないだろう。
アイルランド、ハンガリー、キプロス、エストニアは今回署名を拒否している。しかしEUに取ってこれらの国の同意が必要不可欠だ。OECDは2023年までに130カ国で国際課税を発効したいようだが、それまでの様々駆け引き、取引がある。今の所、米国企業、特にハイテク企業に不利な内容となっており米国議会は細部にわたり検証をしていく必要であろう、本当にこれが歴史的合意なのかどうかは今後の交渉によるが、日本の新聞に書いてあるような合意に至っていないのは世界の常識である。

☆ 推薦図書。
佐藤優著 「還暦からの人生戦略」青春出版社 950円+税
著者はご存じ元外務省職員。この本の副題は、最高の人生に仕上げる“超実践的”ヒント。教養は孤独を跳ね返す武器になる。著者は同志社大学神学部卒でキリスト教徒であり熱心な信者である。それが彼の60歳を超えての人生を豊かにしているという。神学生時代から死について繰り返し考察してきた。だから死に対してある種の耐性がある。還暦からの働く意味。お金との付き合い方、還暦を過ぎてからまだ20年以上人生がある。「体が動く限り働き続ける」のが当たり前なのだ。それを楽しく充実した形で送りたい。イエスは「隣人を自分のように愛しなさい」(マタイによる福音書22章39節)私もこの言葉は教会で何回聞いたことか、そのためにはまず自分自身を愛することだ、そしてその気持ちで他者に奉仕する。著者はこの集積がコロナ禍で閉塞した状況に置かれている日本を着実に良い方向に導くと、している。

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