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アメリカ資本のビール会社がなくなるわけ

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、アメリカ国会の上院でBoston Beer Co.のJim Koch社長が、アメリカのビール会社の90%は外国資本の会社により生産されていると証言した。このようになった原因の第一は、アメリカ税制に問題があると指摘した。議会もこの証言に同意していて、何もビール業界に限ったことではなく、Jim Koch社長によると税引き前利益1ドルは、アメリカ資本の会社では税引き後の利益が62セントになるのに対し、外国資本の会社では72セントになるということで、税引き後利益で大きな差が生じるという。

 

外国資本によるアメリカ会社の買収額は昨年2750億ドル(約33兆円)となり、一昨年と比較し2倍となった。今年はさらに4000億ドル(約50兆円)になると見込まれている。このBoston Beer Co.はアメリカでも有名なSamuel Adamsを生産している。社長でありFounderのJim Kochはハーバード大学でBA、MBA、JDを取得後ボストンコンサルティンググループで働いていたが、ハーバード大学MBA時代の同級生と共に1984年にBoston Beer Co.を設立した。実はアメリカ第二代大統領のJohn Adamsの従兄であり、アメリカ建国の父の一人でもあるSamuel Adamsにちなんでのビール生産を開始し、1995年にはNY証券取引所に上場をはたしている。Jim Koch社長は、アメリカで最後のアメリカ資本のビール会社になるだろうと言っている。これはもちろん、この名前の由来からしても外国資本にはなりえないということであろうか。

 

アメリカでは法人税の実効税率がカリフォルニア州では40.74%になるので、日本の35.76%、カナダの26.3%、イギリスの24%、シンガポールの17%よりもはるかに高い。ビール業界だけでなく、昨年はバーガーキングがカナダのティム・ホートン社に買収された他、製薬会社もカナダの会社に買い取られている。

 

アメリカでは小さな地ビール会社はそれこそ無数にある。日本の地酒と同じだ。しかし大規模なビール会社は間違いなく外国資本になっている。バドワイザーで有名なアンハイザー・ブッシュは2008年にベルギーのインベブに買収され、今やアンハイザー・ブッシュ・インベブ社と名乗っている。更にクアーズで有名なクアーズ社もカナダの会社に買収されてモルソン・クアーズ社。ミラーも南アフリカのサウス・アフリカ・ブリューワーズ社に買収され、SABミラー社となっている。

 

Jim Koch社長の言うとおり、アメリカのビール会社はほとんど外国資本になっていて、その原因はアメリカ法人税の高さだと言っている。日本の法人税率もアメリカに負けず劣らず高いので、日本の有力上場企業も近い将来このように買収される恐れが十分にあると思われる。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
野口悠紀雄著 『戦後経済史』 東洋経済新報社 1,600円+税
著者は元大蔵省のキャリアである。著者の考え方に私がダブルのは、日本は戦前、戦後を通じて依然として「大本営」が存在すること。つまり日本の政府は無責任で、最後は国民に対して責任を取らない。東京大空襲で防空後に逃げ込ませ多くの人を窒息死させ、1000度の高温を発する焼夷弾をバケツの水で消し、B-29に竹やりで対抗するよう国民に命じた。1980年代のバブルが破綻し、長い不景気に陥っても根本的な転換ができない。著者は政府に頼ってはいけないと繰り返し言っている。高齢化社会を前に政府は無責任な幻想をふりまき、デフレからの脱却こそが必要だというアベノミクスの金融緩和や円安誘導こそが問題である。それは一瞬の麻薬だと。黒田日銀総裁こそがA級戦犯であるがごとしの批判である。元大蔵官僚の言葉であるので重みがある。

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