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アメリカIRSの還付金遅延問題

以前このブログで「IRSは金無し、人無し、テクノロジー無し」の三拍子が揃い、何千万もの申告書処理が出来ていないことを書いたが、実際、還付金の支払いも遅れ、何とその遅延利息支払い額が2021年度は33億ドル(4000億円)に及ぶとウオールストリートジャーナル(WSJ)は書いている。この33億ドルという金額は国家連邦予算からすれば僅かな金額だが、IRS予算全体の約1/4にあたる。勿論、この利息支払いは他の予算から支払われるが、2015年の3倍である。一応、直近の会計年度、昨年10月から2022年3月迄では、前年比支払利息額は11%減少している。この遅延金利は連邦短期金利に連動しており、現在4%で市中銀行金利よりかなり高い金利でもある。
この申告書処理の遅れは、長年にわたる共和党主導により予算削減、2019年の連邦政府閉鎖、2020年のコロナパンデミックによるオフィス閉鎖により、一層拍車がかかり、4/29現在2020年及び2021年含めIRSでは960万もの申告書が処理されておらず、修正申告書の処理には20週間以上かかるような状況である。IRSからの還付金を生活費の一部として当て込んでいる納税者にとって利息が付くといっても死活問題でもある。また税法上この受取金利は、日本でもそうだが課税所得となる。
ただ、今回の遅れは、議会やホワイトハウスの決定により大きな影響を受けていることも事実である。つまり、2020年にはトランプ政権がパンデミックにより申告期限が4/15から7/15まで延期され、バイデン政権では2021年に5/17まで申告期限が延期されている。にも拘わらず、税法上は、利息金利は当初の申告期限4/15から45日後から発生することになるから、IRSは実際の申告期限が来る前に利息を払わざる得ないバカみたいな状況にあった。
IRSは、自分たちはデジタル世界環境で運営されている紙ベースのアナログ組織だと言っている。現に、税務申告書用 ソフトウエアーで作成された申告書が紙に印刷されて郵送されてきたもについて自動処理が出来ていないのが実情だ。一方、毎日平均2.4万回のサイバー攻撃にさらされ、その対処に四苦八苦しているとも言っている。更に、IRSへのカスタマーサービスに電話しても署員と話せるのは僅か10人に一人の割合だ。現に電話をしても、留守番電話にメッセージを残すことは出来ず、また後で電話せよと言われ、殆ど署員に繋がらない。それで、IRS自身も歴史上最低の電話カスタマーサービスだと認め、自虐的になっているようである。とはいってもIRSを敵に回すと、IRSは巨大な国家権力であるので、完全に潰される(日本も同じ)、恐ろしい組織ではあるが、この難局を乗り切るには、相当な時間と資金が必要である。遅延利息に税金を何千億円使うのであれば、ウクライナ支援にカネを使ってほしいというのが今のアメリカ国民の感情のようである。

☆ 推薦図書。
和田秀樹著 「80歳の壁」 幻冬舎新書 900円+税
筆者はご存じ東大病院精神科医。人生100年時代だが、健康寿命は男72歳、女75歳である。80歳を目前に寝たきりや要介護になる人は多い。「80歳の壁」は高く厚いが、壁を超える最強の方法がある。それは嫌なことはせず、好きなことだけをすること。「食べたいものを食べる」「血圧・血糖値は下げなくていい」「がんは切らない」「オムツを味方にする」「ボケることは怖くない」
70歳台とはまるで違って、一つ一つの選択が命に直結する80歳からの人生。この本はラクして壁を超える寿命の延ばし方満載である。

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