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クリントンの確定申告

アメリカの個人所得税の確定申告書の提出期限は日本より1か月遅く、4月15日である。前のブログで書いたが、トランプは自身の確定申告書を公表していない。ちなみに、日本の政治家で自身の確定申告書を公表した人を私は知らない。ただしアメリカでは、政治家など公人は自身の確定申告書を公表するのはあたり前のことである。

 

現在、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)は昨年まで8年間の申告書を公表している。ヒラリーはビル・クリントン(Bill Clinton)大統領のファーストレディとして8年間、その後、上院議員を経て、国務長官を4年間。いささか飽きられてきた感があるが、民主党での指名を獲得するのは間違いないだろう。日本とアメリカの税法の根本的な考え方の違いは、日本は夫婦であっても金銭は別、夫から妻に財産が移ると贈与税がかかるが、アメリカの場合は、そんなことはない。夫婦は一つであり、夫婦合算申告があたり前というか、そうしなければおかしいのである。クリントン夫妻もそうである。

 

しかし、クリントン夫妻が確定申告書を公表しているが、日本でのマスメディアは一向に取り上げない。日米の格差の違いを説明しきれないのだろう。昨年の申告では、クリントン夫妻合算で所得は年間2,830万ドル(31億円)である。これはヒラリーの政敵であるサンダース(Sanders)の136倍。クリントン夫妻の主な所得は講演である。1年間に夫婦合計で100回以上の講演を行い、それらの収入が2,500万ドル(28億円)あるという。所得税率は35.7%、住民税も合わせると45.8%の高税率で納税している。アメリカ人富裕層にとっては異例とも言える。しかしこれがクリントンにとっての国民へのアピールであろうか。

 

また、2008年には560万ドル(6,000万円)だった所得がこれほど増加した原因には、ヒラリー・クリントンが国務長官を辞めた後、講演で稼ぐようになったからである。アトランティック誌(The Atlantic)によれば、2013年度にビル・クリントン元大統領は年41回の講演を行い、その収入は1,320万ドル(15億円)を得ている。いちばん高いものではStockholm(スウェーデン)のHandelsbanken Capital Marketsにおいて何と一回の講演料が75万ドル(9,000万円)、またNigeria(ナイジェリア)のAbeokutaでのLeaders and Company, Ltd.での講演では72.5万ドル(8,000万円)の収入を得ている。妻のヒラリーもその年、41回講演を行っており970万ドル(1億1,000万円)を得ている。彼女の講演料は定価があって1回あたり225,000ドル(2,500万円)とされており、高いものではJewish United Fund / Jewish Federation Metropolitan Chicagoで40万ドル(5,000万円)、Beaumont Health System in Troy, Mich.で30万5,000ドル(3,500万円)となっている。

 

ビル・クリントン元大統領は講演料収入の他、Laureate Education Ink.の名誉学長を2010年から2014年まで務め、この間1,650万ドル(2億円)の収入を得ている。また、この学校はクリントン財団(Clinton Foundation)への寄附者でもある。クリントン夫妻は寄附金控除となる寄附金を過去8年間で1,500万ドル(18億円)行っている。ただし、寄附先はクリントンの家族財団(Clinton Family Foundation)となっている。これらの事からわかるのは日本の首相と異なり、在職中の報酬は日米変わらないが、辞めた後が違い過ぎる。歴代大統領はほとんど退職後、巨大な財を成している。ケネディ家をはじめ、何代にも子々孫々続くシステムがある。G7参加国の中で一番退職後みじめなのは日本を置いてない。考えさせられる。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
奥村眞吾著 『こう変わる!! 平成28年度の税制改正』 実務出版 1,852円+税
戦後70年間の税制改正は、自民党税制調査会というところで改正案が作られた。税制調査会長は時には首相よりも権限があった。その最たる人は山中貞則だっただろう。ところが今や、安倍首相自らが旗を振る官邸主導で、その意に反せば野田毅氏も会長を追われ、現在の宮沢洋一氏も戦々恐々である。
平成28年度税制は、年々6万4千戸増加する「空き家」対策にはじまり、法人税実効税率を30%未満にする一方、国際関係に力を入れている。さらには、増大する医療費の抑制や少子高齢化対策として三世代同居減税も織り込まれている。今年の改正はボリュームを大きく、多岐にわたり、しかも複雑さが増している。私は平成4年から今まで毎年、税制改正本を出版しているが、今年度改正は税務に携わる人必見である。しかも、この書はわかりやすく図解を用いている。
自画自賛の推薦本である。

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