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ビル・ゲイツの富裕層増税論とは

マイクロソフト共同創業者ビル・ゲイツ氏、現在世界2番目に金持ちであるとされているが、その彼が最近になり再び富裕税論争に加わっているとForbesBloombergNew York Timesなどが伝えている。今回は、彼もその他のビリオネアも、収入格差をもたらしている不平等な社会システム是正のためにもっと高い税金を払うべきだと唱えている。ゲイツ氏は年末のブログで、米国での貧富の格差を大変憂慮しており、富裕層はもっと税金を払うべきだ、自分も自分の妻、メリンダも含めて現行の税金よりももっと高い税金を払うべきだとのたまっている。(ちなみに彼の所得に対する税率は、たったの14%である。)

 

この問題を解決するために、アメリカ政府は富裕層に対する税金負担を大きくし、特に富裕層に対するキャピタルゲイン税を引き上げるべきだと主張している。さらに、相続税の引上げや、富裕層がよく使う税法の抜け道を塞ぐことは言うに及ばず、州や地方政府の公平な課税も重要だとしている。特に、彼のコメントは民主党大統領候補Elizabeth Warren女史がビリオネアを批判しはじめ、超富裕層に対して6%の富裕税を課すことに言及した頃から多くなった。

 

ゲイツ氏は米国の貧富の格差は急を要する問題であることには同意をしているものの、Warren女史の富裕税には懐疑的である。ゲイツ氏は過去10年にわたり毎年50億ドル(6000億円)ものお金を慈善団体に寄付をしているものの、同時期に彼の富は500億ドル(6兆円)以上増えている。これはアメリカの税制と株価上昇によるものである。ニューヨークダウ株価が上がる限りBloombergによると、ゲイツ氏の富は2010年の530億ドル(6兆円)から現在では1085億ドル(12兆円)と、過去10年で2倍以上になったと報じている。これは何も彼に限ったことではなく、アメリカの富裕層は皆、運用益が10年で2倍以上になっている。これは日本のマイナス金利の世界では理解不可能であろう。

 

ビリオネアの税金引き上げを唱えるビリオネアは、ゲイツ氏が初めてではない。ディズニー共同創業者の孫であるAbigail Disney女史は以前から貧富格差を問題視でしている。最近ではディズニーCEO Bob Iger氏の)報酬年額が6800万ドル(71億円)になったことに対して、従業員平均給与の1424倍であり、正気の沙汰ではないと批判している。

 

Warren女史の富裕税を含む税制改革によれば、ゲイツ氏には64億ドル(7000億円)の税金を納めてもらう計算になるが、全財産から比較すれば大したことではなく微々たるものである。今年の大統領選挙が近づくにつれ、大企業やWall Streetの大物が、Warren女史の富裕税はビッグビジネスに対する脅威だと批判している。特に、JP Morgan CEO James Simon、投資家のMark CubanGoldman Sachs CEO Lloyd Blankfein、ヘッジファンドビリオネアのPaul TudorSteve CohenStanley Druckenmillerは、Warren女史が大統領になれば株式市場は10-25%下落すると暗い予測をしている。

 

民主党大統領候補レースは混沌としているが、最近の調査ではBidenWarrenSandersButtigiegの順番で支持されているようだ。 民主党支持者の中でも左寄りの支持者に人気があるのはWarren 女史、中道から右寄りに人気があるのがBiden氏だが、Warren女史が大統領に選出される場合には、国民皆保険を実施するために富裕層だけでなく中間層に対する増税も考えられ、税制面で大変なことになるのは必至であるが、まず当選は無理だろう。

 

このように、何兆円や何千億円の数字が飛び交うアメリカ富裕層。日本人がいかに発展途上国並の個人所得であるかがわかる。かつて日本人は東南アジア諸国に買い物に行った、安いからである、今や中国などその地域から「日本は安いから」で来る。この30年間で日本は貧しい国になった。所得税率にしても富裕層に対しては55%である。ゲイツ氏は日本の個人税率を知っているのだろうか。

☆ 推薦図書 ☆

橘玲著 『事実VS本能』 集英社 1400円+税

この著者はいろんなジャンルを書いているので感心している。この本は、残酷な知識社会を生き抜く「正しい地図」を手に入れるという事を考えて執筆したとしている。「本能」はいつも、世界を正しく見ることを邪魔している。

「日本人の5人に1人しか文章を正しく理解できない」「日本人と韓国人の厄介なアイデンティティ」など満載。先進国の学習到達度調査(PISA)で16歳から65歳を対象に、仕事に必要な「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決力」を測定する国際調査で、OECD加盟国の先進国を中心に24か国16万人を対象に実施された。

その結果、①日本人のおよそ3分の1は正しく日本語が読めない、②日本人の3分の1以上が小学校3~4年生以下の数的思考力しかない、③パソコンを使った基本的な仕事ができる日本人は1割以下しかいない、④65歳以下の日本の労働人口のうち、3人に1人が、そもそもパソコンを使えない。

私のブログの読者諸氏は信じられないかもしれないが、現実である。例えばナビの情報が間違っていたら目的地にたどり着けない。間違った知識を持った政治家は問題を解決できるはずがない。その中で正しい地図を持たなければ、これが事実にこだわらなければならい理由であると。

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