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Warren Buffettとのチャリティーランチで税額控除はいくらか

フィナンシャルタイムズのようなメジャーではない新聞から拾った記事。
日本ではバイキングというが、アメリカではビュッフェ、バッフェ(buffet)、つまり食べ放題というイメージが日本人にはある。“buffet Lunch”7人分と“Buffett Lunch”7人分のコストの違いが何だろうと、“t”が一文字多い分、その違いは全く大きいと。後者のBuffettは言うまでもなく、Warren Buffettのこと。

 

このほどサンフランシスコ市の低所得層やホームレスを救済する慈善団体Glideが、ニューヨークのマンハッタンにあるステーキハウスSmith & WollenskyでWarren Buffettと他6名とランチができるということをオークションにかけたところ、なんと330万ドル(3億6000万円)で落札するという人が6人もあった。ここで問題になったのが、チャリティーなので寄附金控除ができる。いったい、いくら寄附金控除ができるのだろうか。

 

アメリカの税制では、寄附をした額から、それによって受ける利益を差し引いた額が寄附金である。日本の「ふるさと納税」は3万円をふるさと納税したとしたら、3万円そのものが寄附金控除の対象となるが、これはおかしい。
アメリカでは、ふるさと納税した後、地方都市から見返りにもらった品物の価格を引く。つまり、6000円相当の牛肉が送られてきたなら、3万円-6000円=2万4000円が寄附金控除の対象となる。日本の寄附金税制が先進国で唯一間違っている。寄附の後、もらったものを引かないから、「ふるさと納税」が盛んになる。しかし、これを国税当局が一切言わないのもおかしい。

 

さて、アメリカでは1人330万ドル(3億6000万円)を寄附したら、そこから受けた利益を差し引いた額が寄附金控除の対象となる。普通、ニューヨークの高級ステーキハウスで食事した場合、ワインやチップその他を含めて7人分で多くとも7000ドル(80万円)である。そこで、6人は確定申告でどのような寄附金額を出すのであろうか。飲食代1000ドルとWarren Buffettから受けた投資のアドバイスがあれば、その価値をいくらに見積もるのか。

 

アメリカでのチャリティーはオークションによるものが大きい。この場合、慈善団体は、例えば絵画あるいは有名人の所有物やプロ選手のユニホームなどの金額の見積りを出す。そして贈与者はオークションで落とした金額からこの見積もり金額を控除した額を寄附金控除として申告するのである。
この見積りは①オークションを行った時点で250ドル以上のギフトであることを書面で慈善団体に確認されていること、もしくは、②75ドル以上の価値があることを書面での開示がされていることが必要である。しかし贈与者は、この価値が正当ではないことを知っている。なぜなら、オークションで多額の寄附金を集めたいので、贈与者により多くの寄附金控除を受けさせたいために、慈善団体の評価が低く設定されているのである。したがって、もし慈善団体の見積りに不都合があると、その金額を使って寄附金控除ができない(Treasury Regulation Section 1.170A-1(h)(4))。

 

例として、慈善団体が、ある絵を「IRS Section 6115」に基づいて、市場価値100ドルとしてオークションに出したとする。そして贈与者がそれを500ドルで入札すれば、その贈与者は400ドルの寄附金控除を受けることができる。しかしこの贈与者は、この絵はもっと市場価値があって、すくなくとも1500ドルの価値があることを知っていたとする。この贈与者はその絵を1500ドルで売っても400ドルの寄附金控除を受けることになるので富裕層にとっては、これら慈善オークションは節税と金儲けの一挙両得というわけだ。

 

ところで、先ほどの1人330万ドル(3億6000万円)の寄附金控除額はいくらなのか。Warren Buffettの投資アドバイスの価値が330万ドル以上ならば寄附金控除は受けられない。単なる世間話だけなら、食事代の1000ドルだけだから、329万9000ドルの寄附金控除を受けることができる。寄附社会のアメリカ、税制も実におもしろい。

 

 

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驚くべきことに、サラリーマンの「芸人化」が始まる。若手芸人の場合、芸ができても生き残っていけない現実がある。なぜか。それは芸人の世界ではサラリーマン以上に「いい仕事の数が少ない」からだ。チャンスは少ない。だから先輩たちとの付き合いが重要になる。楽屋へ挨拶に行く、先輩の出演した番組や舞台についてこまめにメールで感想を伝える、夜中に招集がかかったら15分以内で西麻布の焼肉屋に集合する。そういった努力があって初めて、若手芸人は先輩に顔や名前を覚えてもらって、そのことで何かの機会にちょっとした仕事を分けてもらえるようになる。これら若手芸人の日常はエリートサラリーマンにとって非日常だが、これからは3メガバンクの社員は言うに及ばず、AI化でこのような芸人化しなければ、特殊な能力がない限り生き残っていけなくなるビジネス社会になると。しかも、5年以内に。

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