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アメリカも年金問題か?

日本の年金がいつまでもつのか。何年も前から問題になっている。このほどアメリカ政府が自国の年金も危機的水域に入ってきたという報道がWall Street Journalに載った。1982年以来再び、支出が収入を上回ったので、その給付を補うため、3兆ドル(約330兆円)のリザーブ(社会保障トラストファンド)の資金を使わざるを得なくなったと。

 

Social Security and Medicareの管理をしている信託、この信託管理の最高責任者はSteven Mnuchin財務長官。財務省の最近のレポートによれば、2034年までにこのリザーブが底を尽き、社会保障で約束した満額の給付ができなくなる(日本では既に何年も前からそうなっているが)としている。議会が社会保障の財政を補強しない限り、2034年以降、年金受給者は当初約束した受給額を25%カットせざるを得なくなるようだ。

 

アメリカの社会保障は二つに分かれていて、一つは退職者に対して(日本のような定年制はアメリカには全くないので、退職者の定義は異なる)、もう一つは身体障害者に対してのものである。退職者に対しての資金は2034年に、身体障害者のそれは2032年までに底を尽くとしている。一方、65歳以上に適用される国民健康保険のMedicareの病院保険ファンドは、2026年までに底が尽くと予想されており、資金状態が悪化している。

 

しからば、なぜこのように社会保障の資金が悪化してきたのか、理由は3つあるという。まず第1はアメリカ社会の高齢化。社会保障を支える若年層の割合が減少しており、2007年には社会保障受給者1人を3.3人が支えていたが、2017年は2.8人まで減少している。2番目の理由は、政府の減税政策が社会保障への収入を減らしている。3番目の理由は、トランプ大統領が、従来の、若い不法移民に対して強制送還を行わないで働くことができるというプログラムをカットしたことにより、社会保障への収入を大きく減少させる要因になった。

 

この社会保障プログラムは6150万人の退職者及び身体障碍者が受給し、約58万4000人がMedicareを受給するという膨大なプログラムであり、それは将来危機的状況になると予測されるのに、政治家の議論は多くない。Wall street journal によれば解決方法として、1に増税、2に受給額の減額もしくは受給年齢の引上げである。これに対しトランプは、減税、規制撤廃、アメリカに有利な貿易条件により、経済の活性化を図り歳入を上げようという計画である。しかし2018年は第4四半期の成長率、GDPは年換算2.2%である。直前の2017年第4四半期の2.9%に比べると減速しているが、はたしてトランプのいう計画が実現するのか、注視しなければならない。

 

アメリカは1930年代の大恐慌の際、この社会保障制度が創設されたが、それまでリタイヤ(退職)という言葉は存在しなかった。アメリカ社会は差別を非常に嫌う(私も全くそうだが)、人種による差別、男女による差別などだが、定年は年齢による差別である。したがって、その人が毎日ブラブラしているのは、もう二度と職に就く意思がないのかどうかわからない。日本で65歳の人が毎日家にいる理由は、退職したからだろうと推測できる。

 

しかし、日本の年金破綻に比べれば、アメリカとは天と地ほどの差がある。10何年も前から、ひょっとしたら全額もらえないかもしれないなど不安が国民にあるが、それは大丈夫と政府は公表するが、はたしてそうだろうか。今回のアメリカ政府発表の国民不安を、トランプ大統領がそれを覆す政策を行ったことにつながる効果をアナウンスメントしているような気がしてならない。日本の場合は、本当に危機である。もう裏技はないのである。土俵際の「うっちゃり」はない。それでは、どうするか。国をあてにせず、自分で自分の余生に責任を持たなくてはならないということだろうと思う。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
日本経済新聞社編 「AI2045」 日本経済新聞社 850円+税
6月14日に北九州で新幹線が人身事故。そのため、大幅遅れの新幹線車内で読んでしまった。この本は日経新聞に連載していたものをまとめたのであるが、サブタイトルに「神か悪魔か。あなたの仕事をどう変える?」。社長も交代可能、どの曲がヒットするかを予測、「命の格差」を解消へなどをテーマに、これからの世界を描く。自動運転やロボット、工場の生産など、いたるところで人工知能AIが活躍し始めている。AIが人知を超えるシンギュラリティー(特異点)が迫りつつある。AIやロボットによって、人間の仕事の半分が代替される。AIを使いこなせない弁護士は失格。AIは人類の能力・知性を2045年にも追い抜くと予想されている。この本はAIを脅威と感じながら、AIを受け入れ、AIに学び、共存への道を探ろうとしている。
この本のなかで、ノーベル賞受賞者の利根川進、エドバルド・モーセる、ジョージ・スムート、エリック・マスキンに対してのAIに関するインタビューが興味深かった。

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