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仮想通貨犯罪を追う、アメリカIRS

ロサンゼルス発のANA便で今、成田に向かっている。相変わらず、今年も海外が多くなるようだ。

 

ところで、日本では580億円もの仮想通貨が流出した事件で大問題にもなったが、アメリカでは仮想通貨を利用した脱税、マネーロンダリングを厳しく取り締まることになった。ブルームバーグによると、オバマ大統領の時代に、スイスの銀行口座を利用したアメリカ人の脱税をあばいたIRSのエリート10人を今回、仮想通貨対策に投入したと発表した。

 

IRSは仮想通貨がマネーロンダリングや麻薬取引業者など、闇の世界の人々を引きつけ、しかも脱税の温床になっているという。IRSの幹部は「正式に発表していないが、その日は近い。仮想通貨は、オフショア口座が脱税に使われたのと同様、その可能性が高い」としている。SECも仮想通貨対策でチームを結成させ、不正売買や仮想通貨が騙し取られないようにと呼びかけている。

 

日本と異なり、IRSには逮捕できる権限を持つCriminal Agentがいる。彼らはIRSの通常の調査業務に関わるRevenue Agentと2013年にチームを結成し、2年間実際に仮想通貨を使用して、どのようにして脱税を図れるか研究してきた。

 

その結果、仮想通貨大手のCoinbase社に対して、2013年から2015年までの顧客の全取引記録をIRSに提出せよということになって訴訟に発展したが、結局、仮想通貨で2万ドル以上の残高がある者を開示せざるを得なくなった。裁判所はその中で、ビットコインは1970年から80年にかけての規制のない物々交換がアメリカで流行った“Wild West”に似ているとした。司法省によると、何十億ドルの仮想通貨がマルウェアにより身代金を要求する者や、ドラッグディーラー、脱税者など、犯罪者によって取引、利用されている。これは警察などの無能力さを、曝け出しているからに他ならないと述べている。

 

仮想通貨で儲かっている人はごまんといる。2013年から2015年にかけて1万5千人以上のCoinbase社の使用者が2万ドル以上の取引をしているにもかかわらず、IRSに申告したのは、僅か800人。IRSはこれでは脱税者が極めて多いというのは当たり前だとした。

 

今後、IRSは特に仮想通貨から現金に、現金から仮想通貨に変換していくのか、を調査するとともに、アメリカ国内や国外でアメリカの免許を持たない取引所も調べるとしている。IRSのみならず司法省も乗り出した。かなりの脱税者や犯罪者が出ることは想像に難くない。IRSがかつて、ライフルを持って、アル・カポネの密造酒を摘発したことでもわかるが、本腰を入れ始めたアメリカ国家権力は、日本では考えられないほど強い。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
本田直之著 『オリジナリティ』 日経BP社 1500円+税
著者、本田直之氏とはホノルルで1、2度、食事をしたが、実に聡明で努力家である印象を受けた。この氏が、この本で「全員に好かれる時代は終わった」とし、経営環境の特に厳しい飲食関連業界で生き抜くプロフェッショナルたち、彼らへの取材を通じて「オリジナリティ」をどうしたら築くことができるかについて述べている。マーケット、トレンドを追わない。トレンドを追おうとすると、やがてブームは終わる。大切なのは長期的な視点に立ち、自分が造りたいものだけを造ることである。できないこと、やらないことをはっきりさせる。「何でもできます」というのであれば支持は得られない。むしろ「これしかできない」方がいい。それを好きな人に来てもらえばいい。受け入れられない人は来なくなるが、それでいいのである。オリジナリティを貫いたとき、必ず起こるのが賛否両論である。この時、大事なのは、ファンでもない人たちの声に耳を傾けないことである。ネットの書き込みに右往左往しない。自信を持てばいい。マスを相手にするビジネスモデルは、もはや終わったのである。

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