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アメリカの税制改革とTax Holiday

昨週は約1年ぶりにブログを休んだ。何しろ8日の間に太平洋上を東西南北に4回もフライトしたからだ。8日間で計8回飛行機に乗った計算になる。

 

まず、企業が国内で得た利益と国外で得た利益に税制がどう対応するのかが今回のテーマ。かつて日本では、三井物産、松下電器、トヨタなどが海外子会社に何千億円もの利益を溜め込んでいた。ところが当時、トヨタなども内需不振で国内でのキャッシュフローが思うように回らなくなった。そこで、経団連会長職でもあったトヨタは政府に助けを求めて、海外子会社に溜めたカネを日本に還流しても税を課さないようにと。翌年の税制改正で、還流された資金の95%は非課税となり、海外資金はどっと日本に流れ込んだ。

 

一方、アメリカはどうか。法人税率では日本とアメリカは世界水準から見て高いが、アメリカの税法では、アメリカ本社の企業の海外子会社の利益をアメリカ国内に還流すれば、その時点でアメリカの法人税が課される。そのために海外子会社の利益をそのまま留めておくどころか、アメリカ本社を他国に移転する現象が起き始めた。これを“tax inversion”という。これを放置すると、アマゾンやスターバックス、マイクロソフトなど、名だたる企業の本社移転が加速する恐れもある。この問題は大統領選でも大きく取り上げられたのである。

 

トランプ大統領が法人税率の引下げを発表した税制改正案。さらにアメリカ企業の子会社が過去に海外で溜め込んだ利益(profits held offshore)をアメリカ本社に還流させる際、一定期間にのみ軽減税率が適用されるという税制。この一定期間を“tax holiday”と呼び、しかも、その税率はなんと10%の軽減税率。トランプは選挙期間中、こう言った。“Our plan will bring that cash home, applying only a 10% tax”しかし一方で、このtax holiday税制の実現の困難さがある。

 

何しろ10年間で4兆ドル(440兆円)の減税である。財務長官は経済成長による税収の自然増で賄うと述べている。しかしトランプ大統領はさらに所得税の最高税率の引き下げ、相続税の廃止などをうたい、超富裕層や巨大企業にとって受ける恩恵はオバマに比べて比較にならないほど厚遇される。アップルのCEOなどは“Very good for the country and good for Apple.”と狂喜しているほどだ。

 

ただ私は言っておくが、以下の問題、これは日本の新聞が書いたという記事を見たことはないが、大統領選でトランプが言ったこれら大風呂敷の税制改正案を通さなかったとしても、公約違反にはならない。何故なら、日本と異なり、アメリカでは大統領に税制改正の法案提出権限が憲法上ないのだ。税法は議会の権限なのである。したがって、トランプは自分の希望を言っているのに過ぎないということを、日本のマスメディアはもっと伝えるべきだと思うが。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
近藤誠著 『健康診断は受けてはいけない』 文藝春秋 740円+税
「職場検診」も「人間ドック」も欧米には存在しないのに、なぜ日本だけにあるのか。人間、安全に長生きするためには、健康なときに検査を受けないことである。医者に近づかないことに尽きる。検査がアリ地獄に落ちるきっかけとなるからである。ここで「健康」というのは元気で体調が良く、ご飯が美味しくて、日常の生活動作に不自由がないときのこと。欧米では既に比較試験で「検診は無効」と判断。日本は根拠なく1972年に法律で義務化した。日本では健康な人が健診の名のもとに病院に足を運ぶ。「血糖値」を下げれば下げるほど死亡率は高まる。「大腸ポリープ」は放置してもがんにならない。「降圧剤」は認知症、脳梗塞のリスクを高める。アメリカでは「前立腺がん」検診を受けないことを推奨し、スイスは「乳がんマンモ検診」の廃止。CT、胃エックス線撮影の放射線被ばくで発がんリスクが高まる。脳ドック(MRI)などは欧米では存在しないなどなど、元慶応大学のお馴染みの医師が、がんは「早く見つけるほど、早く死にやすい」という本である。

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