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IRSの税務調査、対象の選定はどうしているのか

1か月前のブログでも、アメリカ国税庁(IRS)の職員減少により税務調査件数が減少していることを書いた。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、昨年9月末時点で個人の税務調査は年間100万件にとどまり、前年度より16%低下、最低の件数となっている。これは全申告件数の0.7%という低さ、つまり、1000件のうち7件しか税務調査を行っていないということになる。

 

税務調査の内容を見ると、所得が高くなればなるほど税務調査を受ける確率は高くなるのは当然で、年収20万ドル(2200万円)以下では税務調査を受ける割合は0.65%。20万ドル(2200万円)を超えると1.7%まで上昇する。更に年収100万ドル(1億1000万円)を超えると、5.83%まで上がる。金の持っている者から取るのは効率のよい作業で、日本でも同じである。しかし日本と異なり、2011年の時点で年収100万ドル超の者への税務調査は12.48%であったことを思うと、半分以下になっている。言い訳ではないが、IRSはどのようにして税務調査先を選んでいるのかというと、一つはDocument Matchingという方法である。IRSはコンピューターにより送られてきた確定申告を独自に、計算に間違いがないかどうかをチェックし、誤りがあれば調査する。

 

もう一つは、IRSのScoring Systemをベースにした税務調査。これは、プログラミングされたコンピューターシステムが、送られてきた確定申告書に点数をつける。そして、統計的に任意に選ばれた申告書のなかから基準値を設定する。そして、納税者と似たようなグループの基準値と比較し、所得や所得税額の控除額や寄附金控除額が他の納税者と比べて異常に大きいものを探し出し、税務調査の対象とするものだ。

 

また、Small-Business Ownersも税務調査の対象となることが少なくない。日本も同様だが、家族でやっている事業も、かなり所得があってもごまかしている場合は多い。現金商売がそうである。アメリカでは個人事業主が申告の際、添付するSchedule CといわれるFormを使用している場合は、その確率が多い。

 

Businessと関係ない個人的趣味などから発生する収入や費用、日本では雑所得の分類になるようなものはアメリカでも同様で、所得から差し引けない。アメリカで言うHobby Lossesである。しかし、昨今、富裕層にはこのHobbyとBusinessを混同している者が多く、多額のLossを計上し、否認される例が目立っている。

 

それよりもIRSが注目しているのは、アメリカ国外のオフショア口座からの入金である。日本なんかと違い、ケタ違いの入出金が見受けられるが、十分なIRSの調査が行われていない。トランプは、富裕層に対しての課税強化を打ち出していない。それどころか、富裕層の税金の保護に走っている。金持ちを大事にする国、アメリカ、日本人富裕層が羨ましい国である。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
稲盛和夫著 『考え方』 大和書房 1,500円+税
ご存知、京セラの稲盛氏の著である。彼の体験をもとに、素晴らしい人生をもたらすための羅針盤としての書である。
人生や仕事の結果は「能力」「熱意」「考え方」という3要素で決まるが、もっとも大事なのは「考え方」である。能力を点数で表せば、0点から100点まである。熱意もやはり0点から100点まである。考え方とは、その人の思想、哲学、理念、信念などを総称したものであり、これが最も大事な要素であり、方程式の結果を大きく左右する。なぜなら、考え方には悪い考え方から、良い考え方まで、それぞれマイナス100点からプラス100点までの大きな振れ幅があるからだ。
人生を素晴らしいものにしたいなら、まず「こんな人生を歩みたい」という強い願望を持つ。今日一日に全力を傾け、懸命に生きる。著者は従業員100人に満たない頃から「京セラは世界的視野に立って世界の京セラに前進する」と言ってきた。自ら大きな目標を設定すれば、そこに向かってエネルギーを集中させることができる。偉大なことが成し遂げられるからだ。
人生とは他の誰が決めるものでもなく、自分自身が決めるものである。日々どのようなことを思い、どのような行いをするのかによって、すべてが決まっていく。常に謙虚にして奢らず、誰にも負けない努力を重ね、自分が犠牲を払ってでも世の中のため人のために尽くそうとする。その「自利自他」の精神が必要であるとする。

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