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トランプの減税案、相続税も完全撤廃

予想を裏切る形で、第45代米国大統領がトランプになった。開票を始める直前のインタビューでトランプの選挙マネジャーは「The campaign was disappointed not to have had more support from the Republican establishment.」とか「 It will take a miracle for us to win.」と嘆き節や泣き言を言っていたので、トランプ陣営も負けると思っていた。ところが、Rust Beltとよばれる元工業地帯の田舎の、低学歴の白人男性を中心とした、現状に怒かれる人々が続々と投票に出かけ、トランプに投票したことが大きかった。ペンシルベニア、フロリダ州を取られ、民主党の牙城でもあったウイスコンシン州まで共和党にとられては、ヒラリーに勝ち目はない。オハイオ州を制した者が大統領になると言われているが、ここもトランプに取られ、ニューヨークタイムズ誌は早々とトランプが95%の確率で勝利という見出しを出した。

 

どのメディアも世論調査では最後までヒラリー優位と伝えたが、どうも調査の仕方に問題があったようである。ある調査会社によると、最近の世論調査は経費が安くつくということで、各家庭に電話してインタビューすることをやめ、インターネットで質問票を送り、回答させるということが主流になってきており、ここから有権者の本音がうまくくみ取れなったのではないかとコメントしている。今後の課題を残した。

 

トランプが大統領になるということで、一時株価が下がったが、今やダウは最高値を更新している。これはバブル再来期待ということのようだ。やはり、トランプは不動産ビジネスで財を成してきて、Make America Great Again ということで、公共設備にガンガン投資し、イケイケドンドンやれば皆もついてくるだろうとの予測だそうである。また長期金利も上がりだした。10年物国債が8か月ぶりに2%を超えた。これは、後ほど述べる減税政策により赤字国債の連発が予想され、財政赤字が拡大すると予測されているようだ。

 

それでは、トランプになることで今後税制はどう変わるのだろうか?彼のプランは大きく分けて3点ある。①個人所得税の軽減、②法人税(特に多国籍企業)の法人税軽減、③相続税の撤廃だ。但し、税制改革プランは彼のものだけではなく、共和党下院議長 Paul Ryanのプラン、Ways and Means Committeeの前委員長 Dave Campのプランは2014年のものだが、すでに発表されている。その他にSenate Finance Committeeの委員長 Orrin Hatchのプランもまだ公表はされていないものの近い将来出てくる。

 

それでは個人の所得税についてはどうなるのか?トランプとRyanは現在の7段階から12%、25%、33%の3段階にするもので、最高税率は現在の39.6%から33%(日本は45%の所得税率+住民税率10%)に減少する。33%は夫婦合算申告の場合225,000ドル(3,000万円)、単身の場合は186,000ドル(2,000万円)から適用される。これにより多くの納税者が減税されるが、高所得者は更に減税される。Tax Policy Centerによると、減税総額の半分は年収70万ドル(8,000万円)以上の高所得者であるトップ1%が享受するよう計算されるとしている。一方、片親の家庭や子供が3人以上いる家庭では増税になり、今後修正が必要となるが、日本では考えられない。このような税制を安倍内閣がやれば、金持ち優遇税制だとして一斉にマスコミが叩くだろう。改めてアメリカは金持ち優遇の国だと思う。

 

また、概算額控除(Standard Deduction)の増額 や項目別控除額(Itemized Deduction)に上限を設けることも考えているようだが、それぞれのプランに多少違いがある。トランプの目玉はChild Care費用を負担していない親も含めてChild Care Tax Benefitを与えるということであろうか。

 

キャピタルゲイン課税である配当課税はどうであろうか?トランプは現行の0%、15%、20%の3段階を維持するとする一方、Ryanは課税額の50%を控除した後で以前の税法に戻り通常の所得課税率で課税をしたいとしている。実質、低所得者層で税率は0-6%上昇し、中間所得者層の課税率は12.5%、高所得者層で現行の20%から16.5%に減少するようだ。Campのプランでは課税額の40%を控除した後課税するもので、最高税率は21%ほどになる。まあ、いずれにしても日本の高所得者にとっては垂涎の税法である。アメリカは富裕層を大事にする。だから富裕層が居つく。

 

トランプもRyanもInvest IncomeのSurtax 3.8%は削除したいようだが、Campは2.28%に減額したいとしている。法人税は、トランプは35%から15%へ、Ryanは35%から20%-25%へ下げたいとしている。最後に相続税及び贈与税だが、トランプもRyanも全て撤廃するプランになっている。Campのプランでは相続税及び贈与税には触れていないが、これでアメリカに移住する世界の富裕層は確実に増える。

 

トランプのプランではこのような減税で、10年間で約3.5兆ドル(370兆円)の減収、Ryanのプランは10年間で2.2兆ドルの減収が見込まれる。Campのプランでは10年ではあまり税収に変化はないようだが、10年後にかなりの減収となるようだ。財源は明確ではないようで、赤字国債に依存する確率が高いとされている。いずれにせよ、このように共和党内でもそれぞれ税制政策では意見が違う。これらのプランを上院下院共に共和党が過半数を押さえているとはいえ、どう調整していくか。「The Art of the Deal」著者のトランプ大統領、最大の腕の見せ所で全米が注目している。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
吉川洋著 『人口と日本経済』 中央公論新社 760円+税
人口が減少するから経済はマイナスになるという説を覆す論である。日本の2015年の人口は1億2711万人だが、2110年に4,286万人と3分の1になる。歴史を振り返ると、奈良時代の中央政府は日本の全人口を把握していた。持統天皇の時から全国の戸籍が6年ごとに作られ、氏名、年齢、性別、家族関係まで詳しく記した文書が存在している。しかし9世紀になると戸籍は12年ごと、やがて数十年に一度となり、10世紀に途絶した。その後、明治になるまでなされなかった。明治になってからは爆発的に人口が増えた。だが1920年代に入ると都市部から少子化が始まる。終戦直後(1947年~1949年)に入ると一時的に人口爆発が起き、いわゆる団塊の世代が生まれたが、1975年以降急速に低下し、2004年の1億2,779万人をピークに人口減少時代に入った。しかし、過去100年、日本の人口と実質GDPの推移を見ると、経済成長と人口はほとんど関係がない。労働人口が変わらなくても、1人当たりの労働者が作り出すモノが増えれば経済成長はプラスになる。先進国の経済成長は、人の数で決まるものではなく、イノベーションによって引き起こされるということであるとしている。

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