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世界の富裕者が嫌がる日本の相続税制

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上の表はクレディ・スイスが発表した、純資産(資産マイナス負債)が5,000万ドル(50億円以上)の富裕者の国別人数である。日本は第8位で2,467人、1位アメリカの58,855人比べれば25分の1。しかし、実際の人数はこんなものではない。アメリカも日本も何倍も違うのではないのかと実感する。それはさておき、この表は、欧米と中国、台湾、日本と、地球上での分布では偏りすぎである。リオもオーストラリアも南半球はゼロ、共産圏では唯一、中国が入り、ヨーロッパが多数を占める。

 

これらの国のなかで、中国とカナダには相続税はない。その他、表外の国では、シンガポール、インド、マレーシア、ニュージーランド、オーストラリアなども相続税がない。日本の隣国、東シナ海、南シナ海を挟んで相続税がある国は台湾だけである。台湾は配偶者の相続分は他の法定相続人と均等だという特殊な法律があるが、相続税率は僅か10%の均一税率である。日本の消費税とほぼ同じくらいの税負担で済む。これは、ご近所の香港、中国には相続税がないので、台湾の富裕層の国外逃亡を防ぐ意味での税率である。ちなみに日本の相続税率最高の55%というのは世界200か国以上の中でも群を抜いている。

 

ただ、EUを離脱したイギリスは日本に次いで相続税率が高い。これはサッチャー以来、受け継がれている。相続税率は一律40%である。ヨーロッパ諸国では特に目立った税率なので、イギリス富裕層の国外脱出は後を絶たない。ヨーロッパにはタックスヘイブンで名高いリヒテンシュタインやルクセンブルクが目と鼻の先にあるからである。

 

フランスはどうか。基礎控除は日本より低く10万ユーロ(1,100万円)なので、この国も富裕層の国外脱出が多い。

 

アメリカはどうなのか。世界一富裕層がいて、税率の最高は39.6%。日本で相続税がかかる遺産を残して亡くなる人は年間で5万人以上である。しかし、信じられないことにアメリカは年間約4,000人しかいない。これは多種多様の節税が可能な税制であるからである。ビル・ゲイツにしても亡くなったら、それこそ相続税はゼロに近いであろう。そのため共和党では、そもそも相続税など廃止したらどうかという意見である。

 

今、日本では相続税の負担回避から、有名なオーナー会社の創業者たちの海外脱出は最高潮だ。その相続人が多額の相続税負担のため、大変な犠牲を強いられている。オーナー経営者の相続財産のうち9割は自社株である。そのため、相続税が払えない。最近流行している相続税がない国への国外脱出、彼らは少なくとも一般人より日本経済発展に貢献し、雇用創出にも励んだ人たちが、自分の国を捨てざるを得ないような税制を政府は考えないといけない。超富裕者も生活保護者も選挙での一票は変わりないという論理は、日本に貢献した人たちが日本を捨てることになるだけである。

 

☆ 推薦図書 ☆
志賀内泰弘著 『ギブ&ギブの法則』 PHP研究所 1,500円+税
「ギブ&テイク」と「ギブ&ギブ」の違い。例えば、奥さんが旦那さんに毎日お弁当を作っていたとする。共稼ぎにもかかわらず、奥さんが一人で洗濯をして、家の掃除をして、今日は結婚記念日。しかも10周年の記念日。奥さんもどんなプレゼントをしてくれるのか期待し、特別な料理を作って、今か今かと旦那さんの帰りを待っていた。豪華な料理もとっくに冷め、旦那さんが帰って来たのは深夜。しかも酔っぱらって意識不明。一緒に帰った彼の同僚共に、その場にパタンと寝てしまった。あなたが、その奥さんだったらどうしますかの問いに「そんなのすぐに離婚よ離婚」。なぜ怒るのですか。「心を尽くしてあげたのに、指輪の一つも買ってくるのが当たり前でしょ。結婚記念日を何だと思っているのよ」。
「今、あなたは“のに”と言いました。なぜ腹が立ったのかというと、料理を作ってあげた“のに”、家事をしてあげている“のに”、酔っぱらって帰ってきてプレゼントもくれない。結婚記念日も忘れていた。つまり旦那さんにギブしていたにもかかわらず、テイクしてくれなくて裏切られたという思いがあるから腹が立つ」「ギブ&テイクの落とし穴はここにある。奥さんは見返りを期待して家事をしていたわけではない。しかし腹が立つということは、心のどこかに“見返り”を期待していた。それが“のに”という気持ちに出た」
ギブ&テイクというのは人間の恐ろしい欲のすみかとなる。その欲とは「○○してあげたから、○○して欲しい」という欲だ。相手に「見返り」を求める欲である。世の中のトラブルのほとんどは、これだ。「○○してあげたのに、○○してくれない」そう文句を言う。すると相手は「お前だって、この前○○してやったのに、○○してくれなかったじゃないか」と反論する。「のに!」「くれない」と言い合いになる。「のに」とばかり言っている人は絶対に幸せになれない。見返りを期待しないと、心が軽くなる。読みやすい名著である。

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