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超富裕層に対してのWealth Taxは可能か、アメリカ

Bloomberg やNY Timesによると、George Soros、ハイアットホテル創設者Pritzker家、ディズニー創設者の孫Abigail Disney、Facebook Co-FounderのChris Hughes氏ら19名のビリオネアが連名で共和党・民主党の大統領候補者たちに、富裕層の資産に対し課税が必要であると富裕層税(Wealth Tax)の創設を要求する文書をオンライン上で署名した。この文書の中で、増税は中産階級からの課税ではなく、富裕層からの課税であるべきだとしている。それもアメリカで富裕層トップ1%の内の10%に対し、資産に対して課税を行う必要があると説いている。そして、これらの税金は社会層の不均衡の是正、Climate Changeに対する資金、そして公的な健康保険に使用されるべきであるとしている。

 

この中で一番若いLiesel Pritzker Simmonsは35歳だが、自分たちは税問題の一部である、どうか課税をして欲しいと訴えている(日本では考えられないが?)。また、他の超富裕者層に対しても同様の呼びかけをして欲しい、そしてWealth Tax問題は2020年の大統領選挙の中で是非とも議論をお願いしたいと訴えている。超富裕の平均課税率は15%前後であり、日本では55%である。民主党の候補者の中でもそれぞれ課税の規準は異なるものの、Elizabeth Warren、Pete Buttigieg、Beto O’RoukeらはWealth Taxに賛成の立場を表明しているが、全ての民主党候補者に支持はされていない。資産に対する課税というのは、その評価が難しいからである(日本は財産評価基本通達によって路線価など決められている)。特に芸術品、宝石等は難しく、連邦税法では連邦政府は資産に対する課税を禁じていることも懸念材料ではある。Wealth Taxは1995年時点ではヨーロッパ15か国に存在していたが、現在ではスイス、ベルギー、ノルウェイ、スペインの4か国だけに残っている。その他の国はWealth Taxを実行することが難しく、すでに導入を断念している。

 

この文書に署名をした多くが、社会の不平等に懸念を抱いている。ディズニー創始者の孫であるAbigail Disneyは株主総会で、CEO Bob Iger氏に6560万ドル(73億円)の報酬は正気の沙汰ではないと異議を唱えている。彼女は、国が不平等な社会を是正することができれば、富裕層が力を注いでいる慈善事業への寄付も必要となくなると説いている。また、起業家のBernard Arnault氏もこの文書に署名をした一人だが、このままでは資本主義が弱まり、富の力で権力を行使する者が国を支配し、18世紀のフランスのような封建社会に逆戻りすると懸念を表明している。

 

2013年に刊行されたトマ・ピケティ氏による「21世紀の資本」では、歴史的に投資利回りは経済成長率や給与上昇率よりも高く、不平等が発生する原因になっているとしている。これを是正するために富裕層に対する累進資産課税が必要となるわけだが、実際ヨーロッパ諸国でも多くの国がうまくいかなかったように、その実施にはお金がかかるものであり、脱税も多くなり、なかなか歳入の増加にはつながらないのが現実。また、アメリカでは共和党からみれば社会主義だと見做されやすく、イデオロギーの衝突となる。今後、1年以上にわたり大統領予備選挙が活発に行われるわけだが、Wealth Taxにつき誰がどのように議論を展開していくのか大変楽しみだ。日本ように、税金が払えるのだから富裕層にもっと課税を、という妬み社会にはアメリカはならないのが救える。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
山田昌弘著 『結婚不要社会』 朝日新聞出版 750円+税
日本社会での定義の一つに、男は仕事、女は家庭というのがあった。1990年代以前は「恋愛したら結婚して当然」というのが社会的風潮。つまり、性関係を持つのが結婚を前提としていた。
ところが、「結婚しなくても、性を楽しむ自由を認めろ」と叫ばれ、それ以降は結婚と性関係というものが切り離される。その結果、結婚は二つの条件にさらされる。一つは、性関係を楽しむために結婚というかたちを取る必要がなくなった。もう一つは、離婚の自由化によって、結婚が必ずしも親密な関係の永続性を保証しなくなったことだ。欧米では昔から日本とは異なる変化を遂げている。欧米では、結婚しないで「パートナー」としての親密性を優先し「結婚不要社会」になるが、日本は結婚することが困難なまま事態が深刻化して「結婚困難社会」となる。この最大の要因は、日本人は昔の結婚型社会に固執しているからで、若者のほとんどが結婚は一生続くものだと考えている。現実には3分の1の確率で離婚、アメリカでは2分の1の確率で離婚する。ただアメリカでは、最初から長続きしないと思えば、パートナーや同棲という選択がある。つまり、これが結婚する必要のない結婚不要社会である。

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