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アメリカ、税金滞納者にパスポート発行禁止か

ウォール・ストリート・ジャーナル誌によると、アメリカ議会は来月より支払うべき税金を払わない税金滞納者にパスポートの発行をしない、また、パスポートを所持している者にはそれを取り上げるだろうとしている。アメリカ国務省は、税金をひどく滞納しているアメリカ人(Americans with “seriously delinquent” tax debt)にそのパスポート発行禁止、及び、即時返還を行う。“seriously delinquent”の定義だが、大きい額ではなく、5万ドル(600万円)以上の税金滞納者としている。このパスポート条項が適用されるのは多くの場合、IRS(内国歳入庁)が納税者に対しLien(先取特権)を付けている場合である。つまり日本で言うところの、滞納者の財産が「差し押さえ」られているということ。しかし滞納者がIRSとの交渉で分割払いに応じている場合とか、IRSとの訴訟になっている場合には適用されない。あるいは、子や親が外国で危篤になったとかいう場合(Humanitarian Reason)には緊急性があるとしてパスポートを発行するとしている。

 

アメリカはなぜこのような法案を議会に出したかと言えば、財源のためだ。今年最後の法案“Highway Funding Bill H.R. 22”というのがある。アメリカの高速道路、つまりフリーウェイがいたるところで傷んでいる。ニューヨークやカリフォルニアで顕著であるが、今までのガソリン税からではその修理修繕が十分にできなくなったので、その財源確保のための法案。ハイブリッド化やはたまた電気自動車が出現するに及んで、ガソリンの使用量が減り、税収を確保できなくなったことから、その財源を、パスポートを質にとってやろうということである。このパスポート税収案が1月にも施行されると、既存の税金滞納者にも適用されJoint Committee On Taxationによれば今後かなりの税収になるという。

 

現在国外で暮らすアメリカ人は約700万人いるという。このうち税金滞納者としてTreasury Inspection General for Tax Administration(TIGTEA)によると、2014年には85万5000通の通知を国外のアメリカ人に送っているという。必ずしもIRSの掴んでいる住所地は正確とは言えないが、国外居住者に占める税金滞納者の割合はかなり大きい。

 

日本も国外財産調書制度や出国税など最近、矢継ぎ早に海外資産や海外所得の把握に躍起だが、海外を活用した脱税の恐れがある者にはパスポートの剥奪などの処置を考えた方が効果があると思うが、どうであろう。

 

☆ 推薦図書 ☆
マイケル・ピルズベリー著 『China 2049』 日経BP社 2000円+税
ニクソンが中国との国交を結んで以来「中国は、私たちと同じような考え方の指導者が導いている。脆弱な中国を助けてやれば、中国はやがて民主的で平和的な大国となる」とアメリカは本気で思っていたが事実は全く異なっていた。
経済大国になったが、北朝鮮など独裁国家に協力し続けていて、全く民主化は進んでいない。習近平の夢は共産主義国家になってから100年目にあたる2049に中国が世界一の強国になることだ。そうなるためには、中国にとって都合の悪い者に対して、サイバー攻撃をする。つまり中国は民主化に反対し続ける。環境面からする大気汚染がますます加速し早死にする人が増える。しかも、今もそうだが違法な手段で外国の科学や技術を手に入れる…などなど。つまり中国が覇権を握ると、これらの悪夢は現実のものとなるということである。

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