キャッシュアウトをしなくて節税になるというのは、今の日本では原則、減価償却費だけである。後は費用損金になるのは現実に現金が出てゆくのでたいした意味がない。従って歴史上、個人の節税、つまり所得税や相続税について減価償却資産をいかに活用するかがキーポイントであった。数年前までアメリカの中古木造住宅を取得すれば4年間で家屋の減価償却を完成することができた。しかし当局の規制が入りそれもままならなくなったのである。
税法用語で「即時償却」という言葉がある。これは購入した年度に100%減価償却できる資産の事である。耐用年数が関係なく、購入価格が即、費用になる。これはトランプ大統領が1期目に航空業界が不況に陥ったとき、この航空機に即時償却を適用させたのである、1機100億円のジェット機でも買えば100億円の損金を創れるというので超富裕層がこぞって購入した。
規模が違うが日本でもこの「即時償却」商品が人気を呼んだ。これは建設現場の足場である。1本10万円もしないので、何百本購入しても、それを建設会社に貸し付ければ、すべて損金算入、コインランドリーも暗号資産マイニング業設備も100%償却、これらはすべて「中小企業経営強化税制」に規定されていて、我も我もと利用した。ところが、財務省から貸付用に利用するとか、自らが、その業を行わないのは即時償却の対象外とした。これによってこの種の節税対策は沈静化した。
しかし、新たに登場した節税商品がある。「GPUサーバー」だ。この「GPUサーバー」を取得してデーターセンターに設置し、顧客に提供する事業を行うことで「GPUサーバー」についての経産省の認定を受ける。生成AIには不可欠とされるGPUサーバーの並列処理能力である。節税と事業利益も見込める一石二鳥とされる。ただし、節税商品とするためには、それを購入して賃貸してはダメである。自らその事業を行うことが要求されるが、その事業を行うのは素人には無理だ。そこでGPUサーバーの販売店などと業務委託契約書を交わし、事業をある程度委託することによって成り立つ手法である。
節税商品の開発とそれを規制する当局のいたちごっこは、今に始まったことではないが、いち早く制した者が勝ちである。
★ 推薦図書。
吉田英司著 「一生健康に働くための心とカラダの守り方」 かんき出版 1980円
日本の年金制度の信頼が揺らいでいるため、生涯働くことが普通になりつつある。しかも高齢に
なって働くことが出来れば、収入も人と接する機会も増え、充実した人生を送れることになる。だが働き続けるために最も重要なのは健康である。そこで現代人に多い体調の不満の背景とその対処法について医師である筆者がこの本で書いてある。特に多いのがメンタルヘルス、適応障害、不眠や頭痛。笑う機会や好きなことに熱中することが大事だが、簡単にできることがある、それは挨拶をすることである。「おはようございます。」などの言葉は10字以内だ。この挨拶をするだけでも周囲とのコミュニケーションを保ち、関係性を良好にする。どれだけ周囲と話したくないときでも、この挨拶だけはしなければならない。