今回は久しぶりに日本の話題である。このほど国税庁は今年3月15日期限の所得税確定申告書と贈与税申告状況について公表した。それによると所得税の確定申告書を提出した者は
2338万9000人であり、それによって納税額が生じた者は517万5000人であるとしている、納税した者は前年から22.6%も減少しいているが、この原因は鳴り物入りで導入した「定額減税」のため、納税者が減少したようだ。しかし、それでもなお国全体の所得金額が増加し総額51兆1604億円で申告納税額は前年から8.6%増え4兆3989億円となった。一方、分離課税である土地と株の譲渡をみると、土地を売った者は57万8000人で売却益などがある者は38万8000人で、その所得金額合計は6兆4993億円で平成15年以降最高。次に株式であるが、株の売却で申告した者は118万2000人で儲けたものは73万5000人、その所得金額合計は8兆854億円でこれも最高額を記録した。土地は全国的に公示価格が上昇し、特に都心部の一等地は異常なぐらいに上がった。したがってバブル期以来の土地売却益が個人の懐を潤わせたのである。そして、今年から紙で申告しても「控」の申告書がもらえなくなったことで、電子申告書のe-Tax利用者が増え、全体の4分の3が電子申告で行ったのである。またそのうち半数がスマホ申告であったのには驚いた。
次に贈与税の申告であるが、贈与税の申告は2種類あって110万円控除の「暦年課税」贈与と「相続時精算課税制度」の贈与がある。従来まで「相続時精算課税」が不人気だったのを、「暦年贈与」よりも税法上有利になる改正を一昨年行った結果「暦年贈与」で申告した者が39万7000人と前年から14%減少したが「相続時精算課税」で贈与した者が7万8000人と前年から60%も大幅に増加したのである。そして国庫に入った増税納税額は3935億円と前年から11%も延び過去最高額を記録した。富裕層は相続税は将来もっと上がる、という考えを持っている。そのためには生前贈与を活用するのも選択肢だが、他の節税対策を考えている者が多い。これは先月国会で「日本の相続税率は先進国でも高すぎるので、下げる考えはないのか」と議員がただしたのに対して「その考えは持っていない」と財務省が答弁したことからも明らかなように、相続税を増税しても世論はたたかない。このような、国会でのやり取りさえも記事にしない。むしろ相続税を減税すると「金持ち優遇税制」とマスコミにたたかれてしまう。トランプ大統領は相続税を無くそうとしている。日本は本当に富裕層を大事にしない国である。粗末に扱いすぎる国である。
☆ 推薦図書。
車浮代著 「蔦屋重三郎と江戸文化を作った13人」 PHP文庫 900円+税
2025年のNHK大河ドラマの主人公である蔦屋重三郎は何故、どうして絵師や作家を育てたのか。彼は稀代まれなるプロデュース力を持ち合わせていた。彼は生まれも育ちも吉原、彼は版元だが、当時の版元は錦絵のテーマを決めるのも、浮世絵師に依頼するのも、彫師や摺師を選定するのも、出来上がった絵を販売するのも版元の仕事である、つまり編集、出版、本屋すべて版元の仕事である。彼は今までになかった版元の発想で、江戸中期に活躍した喜多川歌麿、東洲斎写楽、曲亭馬琴を育て上げ、葛飾北斎、十返者一九などと江戸文化を創った13人はどうして蔦屋重三郎の下で開花したのか、時代背景として田沼意次、松平定信と相反した政治家の下での制約下での、危ない表現も面白い。一気に楽しく読める本である