私は今、アメリカに向かって出発準備である。このところトランプ大統領と関税問題が毎日話題を作っている。バチカンでは、新ローマ教皇がコンクラーベで選出されたのも、アメリカ大統領以上の世界的なニュースであった。
トランプ大統領は大学での反ユダヤ主義対策を理由に学生の取り締まり強化などを大学側に要求してきたが、ハーバード大学がトランプ政権の要求を拒否すると発表したのを受けて助成金の一部凍結に踏み切った。これに対しハーバード大学は取り消しを求める訴えをマサチューセッツ州にある連邦地方裁判所に起こした。大学側はトランプ政権は助成金の凍結を利用してハーバード大学の学問上の意思決定を支配しようとしていると訴えている。これは違法であると。New York Timesは「一流大学の奪還を誓うトランプ大統領と大学側との争いが大きく深刻化したことを示している」と報じた。BloombergはWe are going to be taking away Harvard’s Tax Exempt Status. It’s what they deserveと大々的に1面トップで報じたのである。つまりトランプ大統領はハーバード大学の非課税資格はく奪すると言及したと発表した。しかしトランプ大統領は非課税資格のはく奪はこの大学にふさわしいと自身のソーシャルメディアで述べた。さらにトランプ大統領はアメリカ北東部の名門私立大学8校「アイビーリーグ」の非課税資格についてもIRSに調査を命じた。トランプ政権及び一部の共和党議員はこのようなエリート大学はリベラルな主張や、いわゆるWOKENESS(社会的公正への姿勢)を推進していると非難している。税優遇措置を取り消される時期を明言していないが、これが実現すると、大学などに寄附しても寄付金控除が受けられなくなり、当然寄附者の寄附金額が減少する。日本の大学と異なり、アメリカの名門大学と学生は企業、個人からの寄附で大きく賄っている。アメリカに1700私立大学があるが、アメリカ連邦税法に「教育は免税対象の目的」と明記されていて、ハーバード大学は「連邦政府は、大学の教育使命を支援するため、長年にわたり大学を課税対象から免除してきた。ハーバード大学の免税資格を取り消す法的根拠はない」としている。アメリカの法律では大統領がIRSの決定に干渉することは許されないが、IRS長官は財務長官の指揮下である。ハーバード大学は課税となると、学生への援助や重要な研究の中止につながると大声をあげている。日本では名門大学で非課税措置を取り消された大学はない。あの補助金をゼロにされた日本大学でさえ非課税措置が残っている。
★ 推薦図書。細川昌彦著 「トランプ2.0 米中新冷戦」 日経BP 1980円
「内向き」「保護主義」「孤立主義」「予測不能」といわれるトランプ大統領は2期目で彼が目指すものとは、トランプ大統領は1期目では議会や共和党幹部らの「オールワシントン」によって、自由にさせてもらえなかった、と思っている。今回は好き放題できるように重要ポストを気心の知れた忠臣たちで固めた。中国は巨大市場や供給力、軍事力で相手国を威嚇し、「経済の武器化」を常態化させている。いまや「米中新冷戦」の主戦場は「半導体」である。アメリカではTSMCがアリゾナ州で新工場を建設、インテルも建設する。アップルなどのIT企業が後押しする。一方中国は国を挙げて大規模投資を行い、中国共産党が「80%」のシェアを取れと号令をかけている。この予測不能な備えにトランプ大統領は神経をとがらせている。今回の関税問題もこの延長である。