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アメリカ、転売チケットの課税事情

ロサンゼルスでは8月上旬にテイラースイフトのコンサートツアーの最終地としてSoFiスタジアムにて6夜連続でコンサートが行われた。この模様はメディアで大きく報道され、10月13日にAMCの映画館で公開される予定だ。このコンサートは大盛況でチケット転売により大儲けをする人も沢山出てきたようである。チケット転売にはTicketmaster やStubHubが利用されるが、チケット転売者はこれらの販売業者に納税者番号(ソーシャルセキュリティーナンバー)を開示しなければならない。というのも、日本と異なり販売業者はIRSに対し個別に転売者の転売額を報告する義務があるからである。
これは、2021年に、コロナ救済パッケージAmerican Rescue Plan Actにより、新たに新税法が制定されたもので、このような転売を行う業者は、今までは取引金額2万ドル(250万円)かつ取引数200件以上の転売者に関し1099-Kなる報告書をIRSに報告する義務があったが、今回の改正により、取引数に拘わらず販売額が600ドル(9万円)を超える場合には全ての転売者に関し1099-KをIRSに報告する義務があるということに改正された。
今回の改正はチケット転売者だけではなく、eBay、Etsy、PayPal、Venmo等を利用する古着転売業者、犬の散歩業者、更にはあらゆるギグワーカーの税金に影響を及ぼすことになった。勿論転売する場合、利益が出た時のみ課税が発生するわけだが、Lossが出た場合も申告する必要がある。1099-Kには販売額しか報告されないので、原価がいくらだったかは必ず証拠として残しておく必要がある。これらは税務申告上の必須事項となるので、必ず原価がわかる証憑書類、いくらで販売したか、販売手数料、購入日、転売日を把握しておく必要がある。購入日と転売日の期間が1年以内だとアメリカでは短期譲渡のキャピタルゲインとなるので、課税率は納税者の個人所得課税率10-37%の間となる(日本の総合課税)。更に州税もあるので大変注意が必要である。
この新税法は昨年より施行の予定だったが、IRSは今年からの施行に変更した。600ドル以上の販売額ということは、かなり多くの市民・転売者が対象になるので、転売業者にとっては1099の発行数が莫大になり、大きな事務負担となる。したがってアメリカでは、この税制改正には、反対する団体も多く、発行基準を下げようという動きも議会で活発化している。納税者にとってみれば、コロナで非課税の一時金をもらえたが、この新税法による納税基準が厳しくなり、金額によっては予定納税も行う必要が出るわけで、アメリカ市民にとっては、何をするにも税金に気を付けなければならなくなってきた。来年の大統領選で民主党政権バイデンは大丈夫なのだろうか。

☆ 推薦図書。
ヘイミシュ・マクレイ著 遠藤真美訳 「2050年の世界」 日本経済新聞出版 2750円
これから27年後あたりの世界はどうなっているのか、私はたぶんこの世に存在していないだろう。人口からいえば今79億人が100億人になるようだ。それより高齢化だ、すでに先進国だけにとどまらず、中国、ロシアでもその兆候が見られる。やがてインドやアジア大陸にまでみられ、人口増加は南アジア、特にアフリカがその大半を占める。そして化石燃料に依存する分野は縮小し、快適に人生を送れるのには、全く新しいテクノロジーが必要になる。そして米国の政治体制が崩壊し、米中インドの関係が悪化し、中東がさらに不安定化する。新型コロナが尾を引いて、そこに別のウイルス脅威が襲う。などなど予言的であるがきちんとした論理構成の本である・

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