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Form1099というやっかいなもの、IRS

今回はアメリカ独自の税メカニズム。これは日本にはない。アメリカでの個人の確定申告書を提出しなければならない者、特に日本人で、アメリカにも所得のある者、最近多いのはアメリカで不動産投資を行っている者たちである。例えば、修繕費や支払手数料を個人事業者に支払ったとする。これが600ドル(6万円)を超えた場合にはForm1099-MISCを発行し、委託者とIRSに提出しなければならない。

 

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、インターネットを通じて仕事を受注する非正規労働者であるギガエコノミー労働者、オンライン販売業者、ホームシェアリングホストは、この業種のループホールを利用して脱税をしていると報道した。2008年度の新税制によると、Airbnb、TaskRabbit、Etsy、Uber、Ryftのような売り手と買い手を結び、決済にクレジットカードを使用するというオンラインビジネス業者は、税務上特殊なカテゴリーに入る。

 

このようなシェアリングエコノミーにおける特殊なカテゴリーでは、20,000ドル以上及び年間200取引を超えた場合のみ、Form1099-kを個人事業主及びIRSに提出義務が生じる。このように、IRSに提出義務が生じるのは支払う額が高額になる場合だけである。したがって、この分野の労働者はほとんど1099-kが発行されていない。発行されていないが、金銭を受け取った者はIRSに申告する義務はある。

 

ところが、多くのワーカーはIRSに申告していない。要するにギガエコノミーの多くは税金を払っていないことになる。トランプ大統領はこの問題では何も発言していない。しかし政府はこの問題は大きいと思っていて、IRSも個人事業主の1099の存在意味を重要視している。IRSの調査によると、1099の通知を受け取ったワーカーのうち、僅か7%の者しか無申告がないが、通知を受け取っていないワーカーは63%しか申告をしていないと発表している。

 

例えば、ライドシェアー会社のUberは、僅かでも収入がある運転手には1099-kを発行している。また、Ryft社も600ドルを超えるドライバーには1099-kを発行している。ホームシェアリングのAirbnbでは1099-kのルールに従い、20,000ドル及び200取引数のある場合のみ1099-kを発行している。Airbnbのホストの中には100,000ドル超の収入を得ている者がいるが、200回を超えて部屋を賃貸していないことから1099-kを発行していない。これらのことから、個人事業主の多くは税のループホールになっていると指摘されている。

 

ギガエコノミーでの納税者は1099が発行されていない分、申告をしていないことや脱税が多くなる。アメリカでは実際それを申告するとなると、自営業者がSchedule Cという申告書を用いて申告する。その場合Payroll Taxや必要経費をどのようにしなければならないか、複雑な問題が生じる。ギガエコノミーを利用する中小企業経営者の69%は税務知識が不足しているといわれている。この問題は日本でも例外ではなく、非正規の労働者や個人の自営業者の正確な所得の把握は困難である。日米に共通しているのは、これらの人々の所得を把握するには税務職員の数が足りず、しかも微税のコストが非常にかかることである。ゆえに永久の課題になるのか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
小林由美著 『超一極集中社会アメリカの暴走』 新潮社 1500円+税
著者は東大からスタンフォード大MBA、有名な証券アナリストの女史である。アメリカではこの数十年、世界的な企業が誕生している。アマゾン、グーグル、テスラ・モーターズ、フェイスブック、エアビーアンドビー、ウーバー等、枚挙にいとまがない。こうなると、富や権力が一部の人々に集中する。超一極集中化で、貧富の格差が広がる。私も頻繁にアメリカに出張するが、この数年単位でも、アメリカの企業利益は増大(日本はまったくダメ)、株価も上がる反面、工場閉鎖で失業者が増大、この底辺の人々の絶望感は募る一方で、銃の乱射事件も日常茶飯事となった。
この貧富の格差を拡大させる最大の原因は、シリコンバレーとウォール街である。技術も金融も変化が速く、波及効果が大きい。ゆえに両者に資金が集中する。
シリコンバレーには人工知能やロボット技術が集中し、デトロイトの自動車会社も技術部門をそこに移し始めた。そうなると、人件費の安い国からアメリカ本土に工場を移す企業が増える、人が要らなくなるからだ。
グーグルやアマゾンなどのサービス企業は、利用者が知らない間にその情報を記録し、売っている。データはモノと違い、何回売っても減らない。だから繰り返し売り、利益を積み上げる。
このような時代を生き抜くには、数式やプログラミング言語の修得が必要で、それらは、これからの世界共通言語になるとしている。

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