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トランプ大統領候補の節税対策~その2~

前回のブログで書いたように、トランプはホテルやゴルフコースに使用されている110以上のトレードマークをデラウェア州にある法人に移した。デラウェア州ではロイヤルティ収入は非課税となっているからがその理由であると解説した。しかし、今さらなぜデラウェア州の法人にロイヤルティ収入を移したのか。トランプほどの者が知らなかったはずはないからである。

 

法人税が異常に低いアイルランド。アップル社もアイルランドに本社を置いていることで有名になったが、トランプもアイルランドに法人を所有している。そのアイルランドのパテント事務所によれば、少なくとも3つのトランプ関連のトレードマークが、彼のアイルランドの法人“ TIGL Ireland Enterprise Limited”で登録されている。登録されているトレードマークはアイルランドのゴルフコース“Doonbeg”に関連したものであるが、アイルランドではこれらのロイヤルティ収入に対して12.5%の法人税課税になる。トランプは今回デラウェア州に移した会社も含めて、将来、全てのトレードマークをアイルランドの会社に移転することも考えているかもしれない。

 

ただし、トランプは大統領選において、アイルランドのような低税率国の会社と合併し、本社をその国に移転して節税を図ろうとする“ Corporate Inversion”には、断固として反対する立場を明言しているので、彼の会社のアイルランドへの移転は矛盾することになる。しかし、トランプのトレードマークは婦人用肌着類、ワイン、天井埋め込み型照明等、ありとあらゆる物やサービスについているが、その価値に疑問を呈する者も少なからずある。トランプは、密入国を防ぐため、国境に高い壁を築くと言っていたが、最近では、そのメキシコでレンガの積み立て、空調装置、道路清掃等のサービスまでトランプのトレードマークを登録した。

 

トランプが公表している“Financial Summary”では、トレードマーク、ライセンシング、ブランディング等の知的財産の価値は33億ドル(3500億円)。そして、先ほどトランプのキャンペーンがファイルした104ページの“Federal Financial Disclosure”では、トランプのロイヤルティ収入は5601万ドル(7億円)であるとしている。一方、全世界にあるトランプのゴルフ場からの収入は3億ドル(310億円)としている。我々にとって、よくわからない。

 

トランプのデラウェア州へのロイヤルティ会社の移転には、謎が大きい。彼は542社も会社を持っていて、それも、ほとんどが本社はデラウェア州である。その理由はアメリカ人の会社経営者なら誰でも知っているが、節税対策のほか、裁判制度、秘匿主義の争いからの法的保護が厚いということがある。今争っているヒラリー・クリントンもデラウェア州でZFS Holdings LLCという会社を所有している。彼女の講演料収入やロイヤルティ収入をここで受け取っている。

 

ただし、トランプのデラウェア州へのトレードマークの移転もおかしな話だが、アメリカ人の最も関心のある話題はトランプの確定申告書が公表されないことである。ニューヨークタイムズなどは、トランプの確定申告書には爆弾が隠されているといっている。他国のことであるが、関心がある。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
弘兼憲史著 『50歳からの「死に方」』 廣済堂出版 800円+税
課長 島耕作でいちはやくスターになった漫画家である。もともとは松下電器産業にサラリーマンとして入社した。私と同年の団塊世代である。
サラリーマンなら、そろそろ先が見えてくる50代。脱サラして転身・起業するにせよ、定年まで勤め上げるにせよ、この時期に第二の人生を考えて行動するかしないかで、その先は決まる。「残りあと××年」をどう生きるかは「どう死んでいくか」に直結する。中高年が直面する現実と葛藤を通して描いてきた著者が、“逆転の発想”を披露する著である。
人間、生きていれば誰でも老いる。「老いた人」を「老人」と呼ぶが、人は生きていれば誰も、いつか老人になる。日本では65歳以上を「老人」と呼ぶ。これは国が決めた分類で、「老人」は「汚い」「お金がかかる」「役に立たない」ことを指すらしいが、自分が老人であると自覚しなければいけない。それも軽い気持ちで認めればいい。
詩人の萩原朔太郎はこう言っている。「人が老いていくことを誰が成長と考えるか。老いは成長でもなく退歩でもない。ただ変化である」と。

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