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寄附文化?のアメリカ(1)

アメリカは寄附が盛んな国で、寄附を行うことで税金が少なくて済むという節税効果がそれを後押ししている。日本も所得税法78条に寄附金控除の規定がある。それによると、個人が国または地方公共団体に対しての寄附や公益財団(社団)法人、認定NPO法人に対する寄附で所定の要件を満たすものや、政治資金規正等の制約をクリアする寄附については、年間所得の40%を限度としての寄附金控除がある。しかし日本では寄附金控除についての制約も多いことから、寄附を行う人はアメリカに比べて圧倒的に少ない。

 

最近おもしろい記事がウォール・ストリート・ジャーナルに載った。ロサンゼルス在住の美術評論家でもあり、美術品コレクターでもあるElaine Gainsはサンフランシスコの芸術家で、UCバークレー卒のTom Hollandの絵画をどこに寄附したらよいか迷っているのだと。もし美術館に寄附しても、美術館側で倉庫にしまわれ、そのまま忘れ去られるという危険もある。あるいは美術館側でその絵の寄贈を断られる可能性もある。最近、値上がっている絵である。考えあぐねた末、Elaine Gainsは病院に寄附することに決めた。

 

この病院はロサンゼルスにあるCedars – Sinai Medical Centerといい、世界中から患者が来る。この病院の1階にはスターバックスが入っていて、日本人唯一の医者、富田先生(内科医、阪大卒)に何年か前、私は病院の中を案内してもらった。この病院を解説するだけでも1か月分のブログを書けそうだが、それはやめる。ただ日本でいう差額ベッド料金だが、最低でも1日の病室料は3000ドル(35万円)かかるというから、日本ではあり得ない。

 

話を元に戻すと、なぜ病院に絵を寄附するのか。アメリカでは相続税対策として、多くの美術品コレクターが、美術館に寄附するのではなく、病院、リタイアメントセンター、老人介護施設に寄附するケースが増えてきている。特に最近目立つのは、病院に寄附することによる、病院のアートコレクションが増加してきている。入院患者などに対する癒し効果も大きいとされている。

 

ボストンのChildren’s Hospitalでは1996年以来、寄贈による美術コレクションが5000点を超えた。その中で、注目される超巨大ガラス工芸品でシアトルの芸術家Dale Chihulyの作品が、あまりにも大きく売ることができず、このChildren’s Hospitalに寄贈されたという。Elaine GainsはSinai病院で3人の子を産んでいる。彼女の夫もこの病院の理事をしている。病院へ寄附する人の多くは何らかの形で、その病院に関わりあっている場合が多い。しかし、この病院は1976年以来、寄贈された美術品だけで4500点を超えた。

 

なぜ美術品が美術館ではなく、病院に寄贈されるのか、次回(Be Continue)に譲る。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
弘兼憲史著 『50歳からの「死に方」』 廣済堂新書 800円+税
著者はご存知の漫画「課長 島耕作」で有名になった、元松下電器産業の社員。彼は徹底的にサラリーマン人生を描き続けている。サラリーマンも50代が見えてくる40歳代後半。何の前触れもなく、ある日突然、社長室に呼ばれて「関連会社が人材を欲しがっとるんやけどな…、どや…、新天地で頑張ってみんか?給料は下がるかもしれんが、肩書は部長から常務に格上げになるぞ。年とったら地方暮らしの方がええもんやで、ハハハ」と、まさに寝耳に水。人生残り××年、これから先は「覚悟」で決まる。どう生きるかは、「どう死んでいくか」に直結する。中高年が直面する現実と葛藤を通して描いてきた著者が、「逆転の発想」満載で、残り30年の生き方、最後の「死にざま」はこうだと語る。

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