アメリカだけではなく、日本も人工知能を使って確定申告ができるのか非常に興味のある問題である。AIはIRSに納税者に代わって(代理人として)、確定申告することが出来ないという結論である。日本で問題になっている、税務の申告代理は税理士しかできない、法律の相談は弁護士しかできないと法律で定められているが、アメリカでは州によってまちまちで、明確な回答がなかったのである。ちなみに、GoogleのGeminiに確定申告をお願いすると、「確定申告の手続きは非常に重要な作業であり、強力な補助者になることは出来ますが、人間に代わることは出来ません」という答えが返ってくる。Geminiはさらに問題点として、正確さ、プライバシーの保護、責任に言及し、「もし私が間違った税務処理をして、当局から税務調査を受け『AIがそう言った』ではIRSには通らない」とGeminiには主張する。AIは、とわいえ、税金にまつわる専門家であり、インターネット情報、IRSの出版物、金融情報など納税者の支援者となっている。さらにAIとの「会話」は人と話しているように感じられ、初心者向けには、わかりやすく、幅広い税務上の疑問に答えてくれる。
ここでGemini、ChatGPT、Claudeの3つのプラットフォームの無料版に確定申告をする準備作業で何を用意しなければならないかを問い合わせたところ、各人はW-2や1099などの当たり前の書類準備の返答があった。しかし電子申告に必要となる最新の政府発行のIDを持つことを薦めたのはGeminiだけで、ソウシャルセキュリティー番号を必ず持たなければならないと言った。3人とも収入制限のある、無料のDIYユーザー向けのIRS Free Fileなどの提供もしてくれる。しかしIRS Free Fileについての記入方法を教えてくれたのはClaudeだけであった。しかしClaudeは、ロスIRA(Roth Individual Retirement Account)拠出が税引き後資金であるために所得税率は下がらない事には触れられていない。GeminiだけがロスIRA拠出は、所得制限があり年収が一定以上の場合は拠出が出来なくなると指摘している。また3人は慈善寄附をおこなう高齢者にとっての重要な節税についての解説は全くなかった。これは現金寄附の代わりに適格慈善分配(QCD)を利用することで。Net Investment Income Tax(NIIT純投資所得税)を回避することが出来るが、この重要な記述がなかったのである。
いずれにしてもアメリカでのAIによる申告は不可能で、税務アドレスも完全ではない。間違ったAIの節税方法で追徴課税を受けても、訴える相手がいないというところである。
しかしAIは税理士の強力なサポートをしてくれるのは間違いない。が、AIが導き出した答えを客観的に捉え、判断する能力を税理士が持たなければ、より大きい間違いをクライアントに提供することになり、ひいては損害賠償に発展する。AIの出現は便利になった反面、それを使いこなせる能力も専門家が持ち合わせなければならなくなったので、より一層の勉強・努力が求められるようになった。「AIがこう回答したので」は専門家には通用しない。AI活用については、アメリカは日本より一歩先んじているが、AIの欠陥発見もアメリカは二歩先んじているかもしれない。
★ 推薦図書。
アルヴィンド・ナラヤナン、サヤシュ・カブール共著 的場知之訳 「AI過大評価社会」草思社 3300円
AIには何が出来て、何が出来ないかをテーマにした本である。「予測AI」というものは、未来を予測し、政府や企業の意思決定を補完するモノであるが、「予測AI」の開発において、多くの作業で人間の意思決定が入り込む。またデータも人間の裁量で作成されている。このため「予測AI」は間違うが、自動化された判断の過度の依存は、誤った告発や安全基準の見落としなど様々な、問題を提起している。AI開発企業は誇大広告とともに自社製品をいかに販売するかに賭けている。しかし、開発にどんな訓練をしたか、どんなデータを使用したかは企業秘密として公開しない。AIの実態は外部から検証できないのである。
