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アメリカの確定申告書の処理、大幅遅れ。

3月15日が確定申告の期限である。昨年もそうだがコロナ禍で止む負えず申告が遅れることについては容認される。アメリカの期限は4月15日であるが、いよいよシーズンインになった。Forbesの記事によると、今年のIRSの申告書の処理が大幅に遅れるだろうと書いてある。これはIRS内部に設置された独立組織で「納税者の声」といわれるNational Taxpayer Advocateの Erin Collinsが議会で述べたもので、彼女によると、IRSは未だに昨年度分の何百万もの申告書が処理されておらず、そのまま放置されている。個人の確定申告書Tax Return(Form1040関連)で600万、修正申告書(Form1040X関連)で2-300万、四半期毎のPayroll Tax関連の申告書(Form941)で200万程が処理されていないと言っている。更には、IRSに電話をして相談したいと願った納税者にとって2021年は最悪の年であったとも述べている。これは電話を掛けた者の21%しかカスタマーサービスに到達せず、しかも納税相談できたものの、平均的な待ち時間は23分とのことであった。
このような問題を解決するには、どうしたらよいか、短期的には①申告書を処理する署員の報酬を上げる、②雇用プロセスの短縮、➂外部コンサルタントの利用を上げており、また、これらの申告書の処理が追いつくまで、税金回収会社(日本にはない)が自動化された延滞税納付書の送付を一時的に停止することも上げている。長期的にはインフラへの投資を上げ、基本的なカスタマーサービスの向上や、税法の改正についても言及している。特にカスタマーサービスについてはコールバックテクノロジーを導入すれば、納税者の待ち時間の改善や電話を掛け直す頻度も下がり、納税者へのサービスも効率的になるだろうと言っている。
一方、共和党議員は、IRSは昨年5000人の新規雇用を計画したが、実際には200人弱しか雇用出来なかった、したがって長期的な資金提供が今日の問題解決につながるとは思えないと述べている。寧ろシステムの自動化が長期的な問題解決に繋がり、今日のような申告書処理の遅れは発生せず、現在のIRSは時代に残された恐竜のようなものだとも述べている。
一方民主党議員は、IRS署員の仕事量は2010年以降20%以上増加している一方、IRSの予算は20%減少していると述べている。ITに関するIRSの問題は、予算の90%がITの新規構築ではなく既存のメンテナンスに使われており、現にIRSのソフトウエアーは、1960年代のCOBOLなるコンピュータ言語を使用しており、根本的な近代化を図らない限り、予算をメンテナンスからの依存から脱却することは難しいようである。特にここ2年ほどパンデミックにより署員がオフィスに出社しておらず、郵送された未開封の申告書や手紙が山積されている。日本では生じない問題が、なぜアメリカで生じるのか。私は長年日米の申告期を見て感じるのだが、アメリカはサラリーマンでも学生でも所得があれば確定申告しなければならないので申告者数が違う。そして日本はアメリカに無い税理士制度が存在する。税金の扱いは税務署の他は、税理士法に定められたものしか扱えない。従って税務署では、どうどうと税金の相談は税理士会に行けと書いてある。役所がすべきことを民間に押し付ける。税理士も収入になるから乗り出す。究極はアメリカにはないサラリーマンの「年末調整」、勤め先の会社がする。ほとんどのサラリーマンは1年の税金はこれで完結する。アメリカでは、ほとんどのサラリーマンは確定申告だ。これも、本来は税務署がしなければならない業務を民間会社に押し付けている。日本は明治時代から、いかに役人の仕事を民間に肩代わりさせるかに役人は心血を注いだかだ。そのため年末調整などは、扶養者がだれで、保険は何でと、サラリーマンの家庭の状況は丸見えで、それを知っている経理や人事の人に守秘義務はない。だから、プライバシーを重視するアメリカでは制度として使えないのだろう。

☆ 推薦図書。
岡嶋裕史著 「メタバースとは何か」 光文社新書 820円+税
メタバースというネット上の「もう一つの世界」がある。かのFacebookも社名をMETAに変えた。どんな会社も会社名を変更するには、それなりの大きな理由がある。著者によればメタバースは現実とは少し異なる理で作られ、自分にとって都合がいい快適な世界であるとする。次のキラーサービスがメタバースである。メタバースを巡る覇権争いで勝ったものが、次の10年を制するので企業にとっては熾烈な争いが起こる。それでは何がそんなにメタバースに価値があるのか、単に金儲けの話ではなく、社会構造を書き換えるからである。「リアルと仮想の融合」「仮想社会に住む」こと。いくらSNSが居心地が良くても、仕事や学校に行くためにリアルに帰ってこなければならなかった。例えば「後で会おうよ」と言ったとき、スタバやマックを連想するが、今後「後で仮想世界で会う約束をする」
この本はメタバースの入門書としてはわかりやすく、私でも理解できた。

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