アメリカのカリフォルニア州では10億ドル(1500億円)以上の資産を持つ超富裕層に対し、一時的に5%の課税を行うという是非を問う住民投票を11月に行う為に現在署名活動を行っているということは以前このブログでも書いたが、実は、このような富裕層に対する課税強化の動きはアメリカの各州で活発になっており、連邦レベルでも上院議員のバーニー・サンダース氏が富裕税導入の運動を起こしているほどである。
この富裕税導入には、貧富の差の是正や州レベルでは連邦予算削減に対する穴埋めという背景があるが、当然賛否両論がある。ウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)によれば、アメリカにおける所得税収の40%は高所得者世帯上位1%により賄われている、一方、アメリカ人の40%は全く税金を払っていないので、富裕層は十分税金を払っており、全く税金を払ってない人々に代わって、社会貢献をしているという議論がある。確かにこれは真実かもしれないが、富裕層が有している大きな富は所得税システムの枠外にあるということも真実であるとしている。なぜなら富裕層の中でもビリオネアのような超富裕層の多くは、常人が利用できない方法で課税を免れているからだと。
富裕層、ここではビリオネアのような特に超富裕層は、まず給与所得を避ける、なぜなら給与所得に対しては間違いなく源泉徴収があるということである。META社のマークザッカバーグ氏の給与は年間1ドルである。かつてのビルゲイツやスティーブジョブズもそうであった。何兆円も持ってるウオーレンバフェット氏の給与は高いと言っても、ここ何十年間も10万ドル(1500万円)で一定している。給料は毎月現金で受け取るから毎月税金を取られる。超富裕層オーナー社長は報酬を現金でなく株式で受け取っている。なぜなら、売却時のみキャピタルゲイン税を払うだけで済むからだ。しかしビリオネアは株式を売却しないのである。少ない給料では生活費を賄えないぐらい贅沢をしているのは明白である。給料1ドルのザッカーバーグなどはどうしているかというと、まず株式を担保に銀行から生活費の資金を借りる。金利はキャピタルゲイン税よりも低い一方、株式のポートフォーリオは株式市場の上昇とともに株式時価総額は益々増えることになる。
アメリカではビリオネアの3分の1は、親からの相続によるものだ。日本もそうだが、相続税のせいで3代は続かない、今や2代で終わる。アメリカではビリオネアはDynasty Trustを作成し、何世代にもわたり相続税を免れ、富が増える。死ぬまで資産を持つことによりアメリカでは株式や不動産の取得価額が市場価値にステップアップされることをも日本にないシステムだ。つまり、株式を集積し、売却は行わず銀行から借りる、そしてそれらを次世代に継承する、これを”Buy,Borrow,Die”税金回避戦略とも呼ばれていて、アメリカ・ビリオネア間では比較的ポピュラーである。
Federal Reserveの統計では、1990年以降アメリカ全世帯の内上位1%の富裕層が富を増やしたとされ、更に上位0.1%の超富裕層が富を多いに増やし、下位50%の世帯の富のシエアは低下しているとされている。アメリカ経済では超富裕層への依存度がますます高まっていること、そして超富裕層の富がニューヨークダウなど株式市場に大きく連動していること、これは今後アメリカ経済に内包するリスクとなるわけだが、それ以上に影響があるのはアメリカよりはるかに貧しい日本経済ではなかろうか。
★ 推薦図書。
八ッ尾順一著 「ストーリーで学ぶ所得税の論点」 清文社 2000円+税
この本は税法の本であるが小説である。難解とされる所得税法を、いとも簡単に物語にして一般読者にわかりやすく解説している。税務署の所得課税第三部門を舞台にして統括官と調査官の二人の会話を通して、納税者が垣間見ない世界を紹介、例えば所得税法12条の実質所得者課税の原則を二人の条文解釈の違いを通じて、税法の考えを問うている。具体的にはフェラーリの減価償却やキックバックの雑所得を問題提起しているのも面白い。さらには司法の裁判所の税法判断も載せているので、一般読者のみならず、これから税法を学ぶ人や、税理士を目指す人、さらには現在税理士業や弁護士業を営んでいる者にも刺激になる。さすがに実務界に精通した教授の一冊である。
