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トランプに対抗、民主党州(Blue States)の富裕層課税強化

最近アメリカではトランプ政権の指示で、共和党の州であるテキサス州で、ゲリマンダリングと称する特定の政党に有利になるような選挙区の区割りを行い、来年の中間選挙で下院の議席を伸ばすことを計画している。通常アメリカで選挙区の区割りは10年毎に行われる国勢調査後決めるが、次回2030年4月を待たずに行おうとしている。民主党から相当の反発があり、テキサス州の民主党州議員が議会決議阻止の為に州外へ脱出するという騒動にまでになったのである。またこれに対抗し民主党の州であるカリフォルニア州も次回の国勢調査を待たず、民主党議員に有利になるように選挙区の区割り変更を行う法案に州知事は署名した。民主党と共和党の泥沼合戦である。
このように最近では、民主党の州と共和党の州では様々な政治的な対立が頻繁に発生しているが、最近のウオールストリートジャーナル(WSJ)では民主党の州(民主党の色が青なのでBlue Statesと呼ぶが。)が富裕層に対し、所得税、キャピタルゲイン税、別荘(Luxury Vacation Homes)税を強化していると報道している。どの州でもパンデミック後、連邦政府からの財政補助がなくなり、また様々な支出が増える中、財政赤字となってるのが現状だ。また今回のトランプ政権によるOne Big Beautiful Bill Act(OBBBA)でメディケア等福祉関連予算が削減され、これを州予算で補填する、また民主党州に対する敵対措置として連邦政府からの補助金の削減となる中、この埋め合わせを行う為に富裕層に対する課税を強化しているようである。
マサチューセッツ州は年収100万ドル(1億4700万円)の富裕層をターゲットして追加課税を行い税収を増加させたことに成功したことで、多くの州はこのマサチューセッツ州を模範としているようである。コネチカット州やメリーランド州では年収50万ドル(7300万円)以上の納税者に対し、住民税率の引き上げを行い、ワシントン州ではキャピタルゲイン税率の引き上げを行う予定である。ロードアイランド州では別荘の不動産価値が100万ドル以上ある場合には新たな課税を行う仕組みを作り、これをTaylor Swift Taxと呼んでいる。これはTaylor Swiftがロードアイランド州のWesterly市の富裕層が多く住む Watch Hill近辺に別荘(大豪邸だが。)を2013年に購入している。
税金を上げると富裕層は逃げると言うが、アメリカの過去の統計を見ると必ずしもそうではないようである。これは、やはり地域経済と密接したビジネスとしているとか、さらには家族の学校の問題等が原因であるようだ。例外があるとすれば、老齢の富裕層は相続税の重い州から軽い州へ移る傾向があるようである。さて、我が事務所がある、全米でも富裕層が多いカリフォルニア州では、州の相続税はないが年所得が75万ドル(1億1000万円)を超えると住民税の最高税率12.3%となり、年収100万ドルを超えるとMental Health Service Tax 等加算され最高税率は14.63%、これに連邦税率37%を加算すると合計51.63%となる、(ただし日本は年所得が27万ドル(4000万円)となると55%となる。)富裕層に対する課税の厳しいカリフォルニア州(日本よりははるかにまし)だが、彼らもカリフォルニア州を脱出しない。それは恐らく気候(特に海岸沿い)がよいからではないのかと考える。日本の今夏に比べるとサウスベイは天国の気候だ。サウスベイに住むアメリカ人の中には、この気候を、我々は高い住民税で買っているのだと言うものもいるくらいだ。

推薦図書。
ヨハン・ハリ著 福井昌子訳 「奪われた集中力」―もう一度じっくり考えるための方法 作品社 2970円
近頃、腰を落ち着けて仕事をしたり、じっくり本を読んだりできない。そういう人たちが増えてきた。最近のアメリカの大学生にたいして注意力散漫になる頻度が調査された。それによると学生が一つの事に集中できる時間は19秒、会社で働く社員のそれは3分だったのである。ツイッター上では人々がどれだけの時間話題にしているのか追求できるが、2013年には17.5時間だったのが2016年には11.9時間に減少した。どんどん加速する。テクノロジー企業がメディア上でユーザーの行動をスキャンし、そのプロフィールを広告主に販売する、このビジネスモデルを「監視資本主義」と呼ぶが、別名「残酷な楽観主義」ともいう。人の集中力に害をもたらさない一つの方法は、監視資本主義の禁止だ。オンライン上で誰かを追跡し、そのデータを売るビジネスモデルを政府が禁止すれば正常な機能となる。

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