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アメリカの公的年金問題

トランプ政権は、先日のブログで書いたが、One Big Beautiful Billを両院で通過させ、先日、大統領署名したわけだが、その結果、今後10年間で5兆ドル(740兆円)もの財政赤字が増加すると試算され、共和党内でもかなり揉めた。トランプ大統領は、この法案が発効すれば、Social Securityからの収入(公的年金収入)には課税しないと明言していたが、この法案では、65歳以上の高齢者に対しては、年6000ドル(90万円)の追加的な所得控除を行うとしているだけで、Social Security受給額に対し非課税とするとは書かれていない。Social Security Administration も90%以上のSocial Securityの受給者はもはや連邦税の支払いを行う必要がなくなるという誤解を招くメールをすでに出している。後に65歳以上の追加的な所得控除により多くの受給者は連邦税支払いが少なくなると訂正分を出している始末である。
この6000ドルの控除は、独身者の所得が75,000ドル(1050万円)、婚姻者であれば150,000ドル(2200万円)以下であれば6000ドル全額控除額として利用できるとしているが、それ以上の納税者にとっては控除額が減額されるのだ。また、Social Securityは、その他の所得も併せた総合収入をベースに課税され、その所得水準によりどれだけの割合を課税所得に含めるかが決まる。通常独身者であれば、2万5000-3万4000ドルの収入で、婚姻者であれば3万2000-4万4000ドルでSocial Security受給額の50%が所得に加算され、それ以上になると受給額の85%が加算される。これらの基準額はインフレ調整されない為、時の経過と共に課税される受給者の割合が高まる。
今回の追加的な所得控除でSocial Securityの積立額が約300億ドル減るという試算もある中、先日Social Security信託基金は、この積立金が枯渇する時期が2033年となり、昨年発表時より9カ月ほど枯渇時期が早まったとの発表があった。これは枯渇後給付がゼロになるわけではなく、現役世代による積立金は入金されるので、枯渇後給付額が23%カットされると試算している。
現在の平均公的受給額は1976ドル(28万円)とされており、23%カットされると1522ドル(22万円)になるので固定収入のシニア世代にとって454ドルほどの減額は相当痛手となる。早く議会で議論される必要があるが、Social Securityの原資となるpayroll Taxは現在給与額が17万6100ドル(2500万円)を超えるとかからなくなるが、この上限を上げる、もしくは現在Social Securityをフルでもらえる年齢が 67歳とされており、この年齢を70歳まで上げる(事実上受給額のカットになりますが、日本的なやり方である)等様々な面から検討をしていく余地がある。これからまだまだBaby Boomerと呼ばれる世代がリタイヤする一方、平均寿命が日本同様延びているので待ったなしである。

★ 推薦図書。
柴山哲也著 「なぜ日本のメディアはジャニーズ問題を報じられなかったのか」記者クラブという病理 平凡社新書 1100円
著者は朝日新聞社元記者である。ジャニーズ問題は重大な人権侵害であるにも関わらず日本の主流メディアが取り上げなかった。むしろ海外メディが騒いだ。当初メディアが取り上げなかった理由として、男性が性被害にあうという意識がなかったということもあるが、大新聞社が民放テレビ局を子会社に持っている。つまり自社系列のテレビ局が気にしているジャニーズ性被害を報道することはタブー視されていた。日本の「報道の自由度ランキング」は世界で70番目である。常にスキャンダルにたいして忖度が働く。原因として日本独特の「記者クラブ」がある。記者クラブは大新聞やテレビしか会員になれない。そして大新聞などだけが特権的に政府情報などに接することができる。ジャニーズ問題も外国特派員協会から出たものである。日本のテレビ局は総務省の管轄下にあるので政府に忖度する恐れがある。アメリカのようにFCC(連邦通信委員会)が放送行政を政府から独立させる必要があり、報道の自由をもっと獲得するべきだと。

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