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Ferrariは美術・骨董品か

今回は譲渡所得の話をしよう。例えば1億円で買った家を1億円で売却した場合の譲渡所得はいくらか?税に疎い人はプラスマイナスゼロだから利益が無いという。税法はそうはいかない、買ってから売るまでの期間は、その家の耐用年数に応じて減価償却をしなければならない。家屋の価額が6000万円なら木造の場合22年たてば取得費はゼロになる。土地の価格を4000万円とすれば、この家を22年住んでから、1億円で売却すると譲渡所得は6000万円という事になる。
このほど大問題になったのは、Ferrari612S ANNIVERSARY F1 という車を売却したものが、譲渡所得を申告しなかったのだ。減価償却をしないでよい資産とは「時の経過によりその価値が減少しないもの」と定義されていて、歴史的価値または希少価値を有して代替性のないものである。例えばピカソやゴッホの絵や文化勲章受章者の美術作品が該当する。税法では一応の目安として美術品の場合1点100万円以上の作品が減価償却をしない。
この度国税当局と問題になったFerrariの所有者だったものは、「使用または期間の経過によって減価する車ではない」とした、その理由は、このFerrariは、限定モデルであり、全世界での総生産台数は349台と極めて希少性の高い車であって、購入する権利が与えられるものも長年にわたってFerrariブランドの発展に貢献した者に限られるので、極めて希少性が高い。またこのFerrariは車両としての実用性に着目して購入されたものでなく、公道における走行もFerrariに乗ること自体を目的としているのであって、美術品オークション会社が扱うものであり、ほかの車両との代替性もない。としてこの車両は減価しない資産だと主張した。東京国税不服審判所は、この車両は数百台生産されていて、売却時点でも20年程度経過したに過ぎないものであるから、歴史的価値または希少価値を有して代替性のないものとは言えないとして、納税者の訴えを棄却した。
はたしてそうであろうか、希少価値は日本国内で台数はどれくらいあるかの判断であり、しかもそれでは50年たてば非減価償却資産になるのだろうか、棄却の根拠条文はあやふやである。裁判に持ち込めばどうなるかはわからない。ぜひ、この納税者に東京地方裁判所に足を運んでほしい。

☆ 推薦図書 ☆
野口悠紀雄著 「経験なき経済危機」 ダイヤモンド社 1600円+税
新型コロナウイルス感染症による世界経済の危機は、第1次、第2次世界大戦、大恐慌に次ぐ市場で4番目になった。この本はコロナの影響政策を分析し、今後なすべきことを提言、著者らしい内容である。昨年3月の家計調査では、実質消費支出の前年比減少率は6%だった。需要が減少したのは被覆・履物、教育。教養娯楽などで、その比率は全体の3割程度。失業者は4月で、先月から、たった0.1%上昇しただけだった、何故か、そのなぞは「休業者」、休業者とは、仕事を持ちながら、実際には仕事を全くしなかった者のうち、給料等の支払いを受けている者。これまでは150万人ほどだったが600万人にもなったのである。これは飲食業などで営業自粛要請などで休業せざる負えないのだが、いつまでもつか。一方で「悪魔の戦略」というのがあって、コロナで高齢者が死亡する方が、年金給付や医療費が減り財政再建に役立つというのだ。怖いことである。
そして政治家の資質がコロナで明らかになったとしている。ドイツのメルケルは、実に感動的に、しかもはっきりしたメッセージを国民に送った「事態は深刻です。第2次世界大戦以来これほど国民が一致団結を要する挑戦は無かったのです。公的な生活を中止することが必要です、理性と将来を見据えた判断をもって国家が機能できるように、皆さんの職場が確保されるようにできる限りのことをしてゆきます。この危機と恐怖に耐え抜いてほしい。私も全力をつくす」と涙ながらに演説をした。すべてのドイツ国民の心を動かすものだった。
我が国の首相は何をしたか、その日、国民の恐怖をよそに「私は犬を抱いて自宅でくつろいでいるよ」と自らSNSに流したのである。あり得ないことだ。国民は捨てられた、といえる。と

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