アメリカの確定申告書には海外金融口座や暗号資産等につき、すべて開示しなければならない。これは課税、納税とは直接関係ない質問項目が多いという事を以前から、このブログ書いている。アメリカ居住者がアメリカ非居住者から10万ドル(1500万円)超の贈与や相続を受けた場合、IRSにForm3520を提出しなければならない。日本では貰った方が贈与税を払わなければならないが、アメリカはその逆で、あげた方、つまり贈与者・被相続人が税金を払うので受贈者や相続人にとり税務関係は本来発生しないのだが、このForm 3520の提出を怠ると、なぜか贈与・相続額の25%までのペナルティが課され、日本の贈与税額よりも高い金額を払わせられることになるので、驚きであるとともに要注意である。
Forbesのニュースでは、今回アメリカ市民権を持つメキシコ人がアメリカ市民権を持たないメキシコ居住の父親から金銭的なサポートとして2010年、2011年、2012年、2015年と数年にわたり贈与を受けていた。彼はアメリカの確定申告書作成の際、税務専門の弁護士(税理士)に父親からの贈与につき相談したが、Form 3520はファイルされなかった。ところが、IRSによる税務調査を受けた際、Form 3520がファイルされていないことを指摘され、2010年分に対し25%、9万ドル(1500万円)のペナルティを課された。このメキシコ系アメリカ人の納税者は一旦納税後、納得がいかないとして、IRSに還付請求を行うが、IRSはこれを拒否、納税者は更に修正還付請求を行うが、6か月以上経過しても、IRSから何も返事が無いため、連邦裁判所宛、還付を受ける相当な理由があるとしてIRSを提訴したのである。
このForm 3520がなぜ存在するのかというと、オフショア資産や所得の隠蔽というものではなく、IRSとして、海外からの資金の流入をモニター且つ相続・贈与額を把握するものであるので、報告義務があることを税務のプロでも見落とすことが多く、今回の場合も税務専門の弁護士(税理士)に相談しながら、このフォームの提出をしていなかったので、アメリカ人納税者としては相当な理由があるしてIRSを提訴したのである。これにはIRSも合意し、還付申告書を受理し、IRSは9万ドルの小切手を納税者に送り、納税者も一件落着と安堵し、喜んだのである。
ところがである、アメリカ司法省は、IRSに還付を行う権限はないとして、納税者宛9万ドルの返還を求め提訴したのである。これはなぜか、日本の制度には無いので説明すると、アメリカでは、一度裁判所で訴訟となるとIRSは管轄権を失い、司法省の管轄となるのである。つまり、司法省の許可なく、ペナルティを無くしたり、軽減したり、還付したりすることはIRSでは出来なくなる。このケースでは、2025年に司法省はこの納税者と係争中である一方、IRSは司法省の許可なく相当な理由があるとして勝手にペナルティを全額還付する小切手を発行し、抵当権も外したことになる。
このケースでは、メキシコ系アメリカ人の納税者は、何も自身の所得を隠蔽したわけではなく、全く政府機関内での行政権限や管轄が分裂した結果の問題であり、その結果、納税者が翻弄されていることになる。今後議会による解決が待たれることになる、納税者が訴訟を起こした場合、IRSからの小切手は必ずしもそれが裁判の終わりではないという事で、納税者は司法省という底無し沼にはまり込む可能性が高く、訴訟には要注意だとForbes は論じている。しかし、このことから、アメリカに住んでいる日本人も、アメリカの行政機関の仕組みの理解と、留学生などは親元からの送金にForm3520が必要だということを肝に銘じなければならない。
★ 推薦図書。
大島清著 「歩くとなぜいいか?」 PHP文庫 880円
著者は医師で京都大学名誉教授である。人はなぜ歩くのだろうか?から始まって、歩けば、結果としてダイエットになり、足腰が丈夫になり、病気を予防するのである。著者自身の経験から歩くことによって、脳を刺激し、リラックス効果までを解説している。時間も場所も選ばない手軽な趣味で、心も身体も健康な生活を手に入れる。歩くことは、良いことずくめだと。
