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相続税収、過去最高、今や大衆課税に

このほど来年度税制改正大綱が出た。以前にこのブログでも書いたが富裕層封じ込め税制でもある。軒並み生前相続・贈与税対策に規制がかかった。また国税庁が公表した2024年に相続税の課税対象になった被相続人の割合が死亡者全体(1,605,378人)の10.4%にあたる166,730人。つまり10人に1人が課税対象である。死亡者の中には幼児死亡もあり、生活保護者もあり、いまや普通の人が相続税の課税対象になる時代になった、標準所帯で4800万円以上の財産を持っていれば相続税を納めなければならない。相続税の課税根拠は、一部の超金持ちの民衆への富の再分配なのだが、いまの課税対象者は、その人の財産を世間に分配しなければ富の偏在を是正しなければならないとは言えない。相続財産は24兆5415億円でその内訳が現金・預貯金が8兆5602億円、土地が7兆4074億円、有価証券が4兆3676億円、家屋が1兆1901億円、その他が3兆162億円であった。これらで納めた相続税総額は3兆2446億円となり、いずれも過去最高を記録した。税務署に提出された相続税申告書に疑いがあり実地調査をした件数は9512件それに伴う追徴税額は824億円と記録ずくめだったが、毎年この記録は更新されるのは間違いない。これは毎年相続税計算の基礎となる宅地の路線価が上昇していることと、家計の金融資産が、これまた増え続けていることだ。先日、日銀が発表した家計の金融資産残高は何と2286兆円。そのうち預金は1122兆円にも上る。家計の金融資産のうち預金以外に回すのは主に上場会社の株式、投資信託、NISAであるが、依然として家計の金融資産のうち50%は預金に回っている。最近インフレ気味なので預金以外にも金融資産が回っているが、少しだ。これは欧米では10%しか預金に向いてないに比べ異常だが日本人は過去にいきさつから投資にはゆかず、将来の不安から消費がますます減退し、サラリーマンの手取り額が減少する中でも確実に預金は増える。一般サラリーマンに相続税がかかるようになって、現実にはサラリーマン家庭の財産は自宅と預金それに生命保険がある程度が、亡くなると相続税を現金で払うため、また自宅を守る意味から預金を取り崩すので、専業主婦、あるいは残された老人は生活を年金に頼らず負えない。もともと裕福な人だけにかかった昭和の時代の相続税。いまや普通の家庭に重くのしかかる税金になった。来年度税制を見ても働くサラリーマン家庭の扶養控除や基礎控除ばかりがマスコミを賑わしているが、将来の生活費を憂う老人、高齢者にまで襲い掛かる相続税の減税は何一つなかった。これから10年は団塊世代の相続のピークである。この積みあがった家庭の金融資産の何割かは相続税の支払いとなって国庫に入る。昨年は3兆円余りが入った。財務省の描く歳入計画に狂いはないようである。

★ 推薦図書。
杉谷剛著 「日本医師会の正体」 文芸春秋 2000円+税
医療費48兆円はどこに消えたのか、なぜ医療費のムダは減らないのか、著者は開業医は儲けすぎだという。診療報酬という「医療の値段」を決定する際に合理的な理由だけでなく、医療団体の強い要望や政治家の厚生労働省への口利きなど、政治的な要素を含んで決まることがある。頻回診療、2重3重の請求、便乗値上げ、巨額ワクチン補助金、コロナで患者を診ず、改革を拒む圧力団体の日本医師会、クリニックの院長の方が激務の大学病院の勤務医より何故収入が高いのか、日本では欧米と異なり人々が病院に行く頻度が高いのはどうしてなのか・・・など医師会の本当の正体を書いた本である。

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