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海外からのインターネット取引で得た利益の課税国は?

最近、ボーダレスの経済化のなか、日本人が海外に出かけて行って、海外からインターネットサイトを利用して日本国内で事業を行う場合が多くなった。主に香港、シンガポールだが、これらの国からインターネット販売において日本へ輸入し、日本国内において輸入した商品を日本の顧客に販売する。

 

今回問題になったのは、シンガポールでは非居住者である日本人がインターネット販売において、日本へ輸出した商品の発送業務をその日本人が賃借した倉庫で行っており、商品の保管・梱包作業は日本国内の従業員によって行われていた。

 

この日本人はシンガポールに籍を置く会社が行なっていた輸出なので当然、シンガポールの法人税がかかっており、日本人での法人税の納税義務がないとし、日本で申告を行っていなかった。ところが日本の国税当局は、日本の倉庫で行われる作業について、単なる在庫管理や引渡しといった「準備的または補助的な性格活動」の範囲にとどまるものとは到底認められず、この倉庫は「恒久的施設」に該当するため、日本の所得税等の納税義務を負うとした。

 

新たに締結された日本-シンガポール租税条約では恒久的施設(PE)について、事業を行う一定の場所であって、企業がその事業を行っている場所をいう旨規定されていて、事業の管理場所、支店などが具体的に挙げられている。ただこの租税条約では、一定の場所で行われる活動の全体が準備的または補助的な性格のものであれば恒久的施設に該当しないとしているが、その判定は形式ではなく実質な面を重視するとしている。この件は、倉庫は単なる保管場所ではなく、事業の遂行による利得の実現にとって重要かつ必要不可欠の機能を有している、との判断をされたのである。

 

筆者の私見であるが、これがアメリカだったら国税局がどう判断しただろうか。今やシンガポールは租税回避どころか、租税非回避地となった観がある。

 

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宗一郎は「人の心に棲んでみる」と言ったことがあった。単に人の心理を外部者として考えるのではなく、相手の心に棲む。自分をその人の立場に置き、一瞬の場ではなく、どっぷりとつかるのだ。

「世界のホンダ」を育てた天才技術者、経営者と呼ばれた本田宗一郎。彼は1973年9月、ホンダの社長を退任した後、全社員に「お礼」を言うため、鹿児島を皮切りに、全国700ヵ所の事業所の全てを回った。現場を知るために現場回りする経営者が多い。しかし、社長を退いてから子会社や現場の人に感謝する旅に出る経営者がいただろうか。1年半かけて全国を回った。それは、目立たないところで仕事をしている裏方への彼らしい感謝の気持ちであった。「今の日本が最も必要としているリーダー」だと著者は言う。

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