ウオール・ストリート・ジャーナル(WSJ)に今回のトランプ政権のOne Big Beautiful Bill Act(OBBBA)の減税政策によるWinnerと Losersは誰かという記事が躍った。今回の減税により納税者全体では2025年度申告により1250億ドル(20兆円)の還付を受け、2026年度は源泉徴収額減額により800億ドル(13兆円)の恩恵を受けると書いてある。しかし、トランプ関税により物価上場圧力が強まり、消費者に関税分のつけが1000億ドル(15兆円)ほどの負担になるだろうと試算されている。また、更に低所得層にとってはFood Stamp, Medicaidの削減により1350億ドル(21兆円)ほどの負担が増えるともいわれており、富裕層には今回の減税策は大いに恩恵はあるが、低所得者には厳しくなりそうである。
特に、関税による物価の上昇の影響は、低所得者層は「サービス」よりも「物」に可処分所得の大部分を使う為、生活にネガティブな影響を与える。このように関税とOBBBAを合わせると、所得上位30%はまだ恩恵はあるが、それ以外の納税者にとっては、ネガティブな影響を受け、生活が苦しくなる。ある統計によれば、所得下位10%にとっては、年間実質賃金2160ドル(32万円)の減少となり、トップ10%は、9670ドル(150万円)の恩恵があるという試算も出てきた。
このOBBBAにより国土安全保障省は、今回、国境警備及び不法移民取締りに対する予算を1700億ドル(27兆円)確保しており、ICE(Immigration and Custom Enforcement米国移民関税執行局)はサイニングボーナスとして5万ドル(7万5000円)支給し、既に1万人を新規雇用し1万2千人まで増やす予定、合計で2万2000人態勢にしようという計画である。トランプ政権は1日10万人の不法移民拘束し、年間100万人の不法移民を国外退去させることを目標にしている。いまや既に昨年末で60万人を逮捕、国外退去させ、190万人は自発的に国外に出たと発表している。このICEの取締りは益々過激になっており、過度な拘束が多くなり、ロサンゼルス、シカゴ、ミネアポリスの移民の街は完全に意気消沈して活気を失っている。正に国民の税金で不法移民狩りが行われており、また、アメリカ市民もICEに殺害されるという深刻な事態も報道されている。
また関税については、消費者に転嫁されており、インフレ圧力がますます大きくなっている。更に、今回の関税措置によって、輸入業者が関税の多くを負担しており、これはアメリカ市民に対する増税と言われても仕方がない。この関税については大統領権限を逸脱しているとして最高裁で係争中であるが、近く判決が下りるようで興味深い。
ニューヨークタイムズ(NY Times)のコラム欄に、ケネディセンターの冠にトランプの名前を追加したり、ノルウエーの首相に対し、グリーンランドをアメリカの領土とするのはノルウエーがノーベル平和賞を自分に与えてくれなかったからだ、というようなナルシスト的な発言を見る限り、トランプ大統領はAmerica Firstではなく Me Firstにしか見えない悲しむべき状況に今のアメリカがあると書いてあった。アメリカでは各地で反ICEのデモが行われている。この連邦政府と州政府が対立する構図、また同盟国を敵視する構図、モラルよりも金が優先し、弱者を切り捨てる姿勢、これらのアメリカの変容には日本政府も気を付ける必要はあるが、日本の報道機関の論調を見る限り、何とトランプ大統領にFriendlyなことか。相変わらず能天気な日本、総選挙の真っただ中、この事態を正確に把握している立候補者はどれくらいいるのだろう。
★ 推薦図書。
黒柳徹子著 「黒柳徹子の一生懸命対談」 筑摩書房 900円+税
90歳を優に超え現役テレビ出演者である。この前初めて「徹子の部屋」を見て有働由美子氏などと話をしているのを見ると、正直仰天する。「年齢分の時間をかけてリハーサルを重ね、人生の舞台に立っているのだと考えれば、どんな人の人生も面白くないはずない。自分もしゃべるのが好きだけど、それよりも人間的魅力を持ってらっしゃる方の話を聞くのがもっと好きです。」と書いていて、この本の登場者で興味深かったのは、司馬遼太郎、市川房枝、坂東玉三郎、宇野千代さんたちであった。対談集の抜粋である。
