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リヒテンシュタインの財団活用の節税策に、NOの地裁判決

リヒテンシュタインという国をご存じだろうか。正式名称はリヒテンシュタイン公国で、国の面積160平方キロで世界で6番目に小さい国、人口は4万人である。欧米の企業や富裕層に人気の国である。まず世界的に有名なのは所得税や相続税・贈与税が存在しないということ。法人税については国際基準に準拠しているが、法人税率は非常に低い。この制度は富裕者や投資家・企業にとっては垂涎の的で、しかも源泉徴収制度も存在していない。今回の事件はこのリヒテンシュタインを舞台に合法的に節税を図ったつもりの日本人が、国税当局と争った末に東京地裁民事3部(篠田賢治裁判長)は国税当局に軍配を挙げたのである。事件は、ある日本人富裕者がリヒテンシュタインに3万スイスフラン(500万円)を出資して財団法人を作った。財団の公の目的は当然のことながら世界で貧窮する人たちへの寄附である。ところがこの財団はアメリカ・フロリダ半島の南東に所在するバハマに100%子会社法人を所有していた。問題はこのバハマ法人は、なんと22億円の公社債を保有していたのである。つまりこの日本人(原告)はリヒテンシュタイン財団とバハマ法人を通じて22億円の公社債を持っていたことになると税務当局は判断したのである。日本の公益財団法人がバハマ法人の株式を保有して、しかも公社債を所有していたら、何ら問題がないが、日本の公益財団法人は監督官庁や内閣府の監査が厳しく、まずバハマ法人の株式なんかの所有は認めないであろう。これはリヒテンシュタインだから可能となったのである。裁判所の結論も、この22億円の公社債は原告本人が所有していたと判断したのである。原告は「リヒテンシュタインの財団準拠法では、財団にたいする財産の拠出者が保有すべき株式等に相当するものに関する規定がない、この財団は出資持分の定めのない法人であるから出資者が保有するとする株式はない」と主張していた。これにたいして東京地裁は「外国法人(バハマ法人)に対する支配力の有無の判定は、形式上・名目上のものでなく、その外国法人を実質的に支配し得るかどうかで判定するものである。諸外国の法制度が日本の法制度と異なり得るのは明らかであるので株式・出資の概念が日本のそれとは異なるものである。」と、結論付けた。つまり、いろいろと策を弄しているが、この公社債はあなた以外に処分する者がいないでしょうということだ。今回の判決は、その通りだと思うが、このように直接、日本からの出資でリヒテンシュタインに財団を設立したのは、国税当局を刺激したのに間違いない、方法論としては、失敗している、しかし、世界一秘匿性が高いと言われるリヒテンシュタインだが、このように「やりかた」を間違えると、とんでもない事になるという教訓である。知識が足りなかった。

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